アメリカの入れ歯率は?米国と日本の義歯装着率の違いを歯科医師が比較

入れ歯ナビ:アメリカの入れ歯率は?
遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の歯医者「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

アメリカでは18〜74歳の約5人に1人が入れ歯を使用していることをご存じですか?

本記事では日本とアメリカの入れ歯装着率を比較し、日本との違いを見つけていきます。日本との違いが生じる背景も深掘りし、人種や治療費が与える影響を考察します。

本記事で学べる歯科知識
  • アメリカの入れ歯率
  • 日本の入れ歯率との比較
  • 人種・収入・治療費などが入れ歯治療に与える影響
目次

1分でわかる!アメリカの入れ歯率と日本との違い

アメリカでは5人に1人が入れ歯を使用している。
アメリカでは18〜74歳の約20%が入れ歯を使用しているといわれています。

アメリカでは18〜74歳の約20%が、総入れ歯または部分入れ歯を装着しています。日本とアメリカの年代別の入れ歯率は以下の表の通りです(NHANES III 1988–1991)。

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年代日本
入れ歯装着率
アメリカ
入れ歯装着率
18〜34歳0%2.3%
35〜44歳2.1%6.3%
45歳〜54歳7.2%14.4%
55歳〜64歳27.6%31.7%
65歳〜74歳66.3%56.0%
日本とアメリカの年代別入れ歯率。日本のデータは2022年、アメリカのデータは1989-1991年の数値。現在では、アメリカの入れ歯装着率が変化している可能性があります。

入れ歯率の傾向は、日本とアメリカで似ていることがわかります。日本と異なり、アメリカでは国民全体の入れ歯装着率を調べた新しいデータがないため、1989-1991年のデータが最新です。

歯を失った際には、入れ歯以外にもインプラントやブリッジなどの治療法が存在しますが、アメリカでは入れ歯を選ぶ人と選ばない人に特徴があります

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入れ歯を
選ぶ人の特徴
入れ歯以外を
選ぶ人の特徴
高齢者
非ヒスパニック系黒人
低学歴
低所得
失業者・退職者
若年層
高所得層
民間保険加入者
未婚者(特に上顎)
アメリカの入れ歯を選ぶ人と選ばない人の特徴

白人世帯は黒人世帯よりも収入が約65%高く、人種による影響が見受けられます。若年者では、審美的な理由により入れ歯以外の治療法を選ぶ人が多いことが推察されます。

アメリカにおける入れ歯治療費の中央値は、約2,000ドル=約30万円で、日本の入れ歯治療(保険)の30倍の治療費が必要です。

アメリカの「入れ歯率」はどれくらい?

アメリカの入れ歯率を、全体、年代別、入れ歯の種類別にまとめました。古いデータにはなりますが、入れ歯の詳細が調べられた「NHANES III:1988–1991/Phase1の口腔データ)を参考にしています。

アメリカにおける入れ歯装着率を、全体(総入れ歯+部分入れ歯)、総入れ歯、部分入れ歯に分けてまとめた折れ線グラフ。
アメリカにおける入れ歯装着率(全体、総入れ歯、部分入れ歯)を示します。年齢とともに入れ歯の装着率は増加し、全年代で総入れ歯よりも部分入れ歯を装着している人が多いことがわかります。

Denture Use and the Technical Quality of Dental Prostheses Among Persons 18–74 Years of Age: United States, 1988–1991

アメリカ全体での入れ歯率

米国の全国調査(NHANES III:1988–1991/Phase1の口腔データ)では、18〜74歳の「約5人に1人(約20%)」が部分入れ歯または総入れ歯を使用している、と報告されています

アメリカの年代別入れ歯率

アメリカの年代別入れ歯率を以下の表にまとめます。

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年代全体の入れ歯装着率
18〜34歳2.3%
35〜44歳6.3%
45歳〜54歳14.4%
55歳〜64歳31.7%
65歳〜74歳56.0%
アメリカの年代別入れ歯率

アメリカの入れ歯の種類別(部分入れ歯・総入れ歯)装着率

アメリカの部分入れ歯と総入れ歯の装着率を以下の表にまとめます。

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年代総入れ歯装着率部分入れ歯装着率
18〜34歳0.2%2.1%
35〜44歳0.7%5.6%
45歳〜54歳2.2%12.2%
55歳〜64歳8.1%23.6%
65歳〜74歳23.0%33.0%
アメリカの種類別(総入れ歯・部分入れ歯)装着率

部分入れ歯のほうが総入れ歯よりも装着率は高く、どちらの入れ歯も年齢が増すにつれて、装着率も増加していきます。

アメリカでの入れ歯率の傾向

アメリカでは歯を失った際に、入れ歯を使用する傾向が強いグループとそうでないグループがあります。

入れ歯治療を選ぶグループとそうでないグループの特徴と、なぜそのような差が生じるのかを解説します。

アメリカで入れ歯率が高くなる特徴

歯を失った際に、アメリカで入れ歯を選択する傾向が強い条件は以下の通りです。

入れ歯率が高くなる条件
  • 高齢者
  • 非ヒスパニック系黒人
  • 低学歴
  • 低所得
  • 失業者・退職者

男性、非ヒスパニック系黒人、低学歴、低所得、失業・退職者は入れ歯を選択しやすいです。2011年時点で、白人世帯の中央値収入は黒人世帯より約65%高く、人種による違いが色濃く反映されています。

Prosthesis choice in the adult USA population with partial edentulism

The distribution of income is worse than you think: Including pollution impacts into measures of income inequality

アメリカで入れ歯率が低くなる特徴

アメリカにおいて、入れ歯を選択する傾向が弱い条件は以下の通りです。

入れ歯率が低くなる条件
  • 若年層
  • 高所得層
  • 民間保険加入者
  • 未婚者(特に上顎)

未婚者や民間保険加入者は入れ歯以外の治療法を選択しやすいことがわかっています。

Prosthesis choice in the adult USA population with partial edentulism

アメリカで入れ歯率に差が出る理由

日本では国民皆保険制度により、安価に入れ歯治療を受けられますが、アメリカではそうはいきません。

入れ歯はインプラントやブリッジに比べて費用が大幅に安価であり、特に低所得層や保険未加入者にとって現実的な選択肢となっています。インプラント治療は高額であり、経済的負担が大きいため、費用対効果を重視する患者層で可撤性義歯が選ばれやすい傾向があります。

一方で、若年層では審美的な要求が高く、失っている歯の本数が高齢者に比べて低いことから、ブリッジやインプラントが選択されやすいのだと思います。

Clinical performance of tooth implant–supported removable partial dentures: a systematic review and meta-analysis

アメリカと日本の入れ歯率と治療費の比較

アメリカと日本の入れ歯率と治療費は違うのでしょうか?アメリカのデータは1990年前後のデータ、日本のデータは2020年のデータを使用し、両国の違いを比較します。

Denture Use and the Technical Quality of Dental Prostheses Among Persons 18–74 Years of Age: United States, 1988–1991

令和4歯科疾患実態調査

アメリカと日本の部分入れ歯装着率

日本とアメリカの部分入れ歯装着率を比較します。

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年代日本
部分入れ歯装着率
アメリカ
部分入れ歯装着率
18〜34歳0%2.1%
35〜44歳2.1%5.6%
45歳〜54歳5.9%12.2%
55歳〜64歳24.1%23.6%
65歳〜74歳53.9%33.0%
日本とアメリカの部分入れ歯装着率の比較

全体の傾向や数値は似通っていますが、65〜74歳では、日本の部分入れ歯使用率が突出しています。

アメリカと日本の総入れ歯装着率

日本とアメリカの総入れ歯装着率を比較します。

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年代日本
総入れ歯装着率
アメリカ
総入れ歯装着率
18〜34歳0%0.2%
35〜44歳0%0.7%
45歳〜54歳1.3%2.2%
55歳〜64歳3.5%8.1%
65歳〜74歳12.4%23.0%
日本とアメリカの総入れ歯装着率の比較

部分入れ歯の比較データとは異なり、日本において総入れ歯装着率が、アメリカの各年代と比べて約半数になっています。

日本では年を取ると部分入れ歯を多くの人が使用していますが、歯が一本もなくなって総入れ歯を使用しなければいけない人はさほど多くないことがわかります。

アメリカと日本の入れ歯治療

American Dental Association(ADA:アメリカ歯科医師会)が公表している2022年の入れ歯治療費の中央値は、総入れ歯・部分入れ歯ともに約2,000ドル=約30万円です

日本の保険治療の入れ歯は約1万円程度ですので、患者さんが負担する治療費は日本の30倍となります。

日本とアメリカの入れ歯治療の治療費の違い:日本は1万円でアメリカは30万円なので、治療費は30倍違う
日本の保険治療で入れ歯を作ると、アメリカで作る場合の3%で入れ歯を作れます。

日本の感覚では30万円は非常に高額ですが、インプラント治療では治療費はもっと高額になります。入れ歯を基準として、インプラントオーバーデンチャーの治療費は2〜8倍、インプラントの治療費は17倍とするデータがあります。/

約2,000ドルは上下どちらかの治療費ですので、上下とも総入れ歯にする場合には約4,000ドルとなる計算です。インプラント治療の場合は入れ歯治療の17倍の治療費がかかるということなので、2,000×17=約34,000ドル=約530万円となります。

Maryland department of health:rate adjustments for dental services under the medical assistance (medicaid) program

Oral health‐related quality of life of patients rehabilitated with fixed and removable implant‐supported dental prostheses

「アメリカの入れ歯率と日本との違い」のまとめ

アメリカの入れ歯率は18〜74歳で約20%(約5人に1人)とされ、年代が上がるほど装着率は増加します。日本と全体傾向は似ていますが、65〜74歳では日本の部分入れ歯が高く、総入れ歯は日本がアメリカより低いのが特徴です。

入れ歯による治療が選択される背景には、保険制度や治療費の影響が大きく、米国で入れ歯治療の治療費が約2,000ドルと高額なため、所得・人種・保険加入状況によって入れ歯を選ぶ層が分かれます。

Q&A

「アメリカの入れ歯率と日本との違い」に関連する質問を集めました。

アメリカ人の入れ歯率は?

18〜74歳のアメリカ人の入れ歯率は、1990年頃のデータで約20%です。

アメリカの歯医者が高い理由は何ですか?

アメリカは日本とは異なり、国民皆保険制度がありません。歯科治療費は基本的に全額自己負担になるため、アメリカの歯医者は高く感じてしまいます。

しかし、日本の自費治療とアメリカの治療費を比べると大きな差はないことから、日本の保険治療が極端に安い価格に設定されているといえるでしょう。

アメリカで入れ歯を作るといくら?

アメリカ歯科医師会が公表している2022年の入れ歯治療費の中央値は、総入れ歯・部分入れ歯ともに約2,000ドル=約30万円です。

アメリカは自費治療となりますので、各州や各歯医者で治療費の実態は大きく異なる可能性があります。

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