20代〜80代の部分入れ歯・総入れ歯・ブリッジ・インプラントの装着割合と抜歯数

年齢別の入れ歯の装着割合は?
遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の歯医者「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

自分のお口の状態が、同年代の人と違うのか気になりますよね。

本記事では、年代別(20代、30代、40代、50代、60代、70代、80代以上)の抜歯数と欠損補綴装置の装着割合をまとめました。欠損補綴装置とは歯を失った場合に装着する装置のことで、部分入れ歯、総入れ歯、ブリッジ、インプラントのことを指します。

厚生労働省が実施する歯科疾患実態調査のデータをもとに、入れ歯の装着割合を20代から80代まで、歯医者が解説します。

目次

欠損補綴治療とは

欠損補綴治療とは、失った歯を補うための治療法を指します。これには入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの方法が含まれ、広義には矯正治療や経過観察が含まれます。

欠損補綴治療にはそれぞれのメリットやデメリット、特長がありますので、担当医としっかりとディスカッションをして、決定する必要があります。

部分入れ歯(部分床義歯)

部分入れ歯は、一部の歯を失った場合に適応される義歯です。歯を失った状態を「欠損」といいますが、部分入れ歯は1歯欠損から13歯欠損まで、幅広いシーンで使用されます。

総入れ歯(総義歯)

総入れ歯は、全ての歯を失った場合に使用する義歯です。上顎または下顎の全体を覆う形で作られ、口腔内の粘膜の形状に合わせて設計されます。部分入れ歯とは異なり、14歯欠損の場合のみに利用される入れ歯です。

いきなり総入れ歯になることは少なく、長い年月をかけて部分入れ歯から総入れ歯に移行します。

ブリッジ

ブリッジは前後の歯を土台とし、失った歯を含む被せ物を装着することで、失った歯を補う方法です。

インプラント

インプラントは、歯を失った部分の骨にインプラント体という土台を挿入し、その上に人工の歯(上部構造)を装着することで失った歯を補います。

欠損補綴治療を選ぶ際の基準

30代で欠損補綴治療を選ぶ際には、長期的な視点を持って治療法を選択することが求められます。特に、生存率や費用対効果、そして歯科医師のアドバイスを重視し、それぞれの治療法のメリットとデメリットを比較することが大切です。

生存率

治療法選択の基準のひとつとして、生存率、すなわち治療がどれだけ長持ちするかが挙げられます。一般的には10年後の欠損補綴物の生存率、つまり10年生存率が指標とされます。

10年生存率は、入れ歯で約50%ブリッジで30〜90%インプラントで約90%です。

ブリッジの生存率は文献によりばらつきが大きいです。日本の一般歯科における奥歯のブリッジの10年生存率は約30%とするデータもあります。

臼歯部修復物の生存期間に関連する要因

費用対効果

欠損補綴治療を選ぶ際、費用対効果も重要なポイントです。

インプラントは初期費用が高額ですが、長期的な視点で見れば、再治療の回数が抑えられることがあります。一方、入れ歯は初期費用は抑えられるものの、生存率の低さがネックです。ブリッジは状況によっては中程度の費用で、高い生存率を得られる点が特長です。

30代という若い年代で選ぶ欠損補綴治療に、絶対的な正解はありません。それぞれの口腔内の状況、経済的な状況を踏まえ、歯科医師との密な相談が一番需要となるでしょう。

歯科医師からのアドバイス

治療法の選択において絶対的なものはありません。特に30代では将来のことを考えた治療が重要であり、専門家の意見を取り入れつつ、自身が納得できる治療法を選択することが重要です。

少ない欠損歯数においてはインプラント治療がスタンダードとなりつつあります。その一方でインプラント治療には、高額な治療費と外科手術が伴う点を考慮しなくてはいけません。

信頼できる歯科医師と共に治療計画を立てることが、健康的な口腔環境を維持するカギとなります。

治療法の選択に絶対的な正解はありません。自身が後悔しないように、しっかりと相談してから決断することが重要です。

歯科疾患実態調査とは

歯科疾患実態調査は、全国から抽出された国民を対象とした厚生労働省による調査統計で、5年毎に実施されています。最新のデータは令和4年のものです。歯科疾患実態調査から得られた口腔に関する情報は、口の健康に関する政策の評価や、さまざまな政策などの基礎資料として広く活用されています。

本記事では令和4年歯科疾患実態調査のデータをもとに執筆しています。

厚生労働省 令和4年度歯科疾患実態調査

20代の入れ歯・ブリッジ・インプラントの装着割合

20代の入れ歯・ブリッジ・インプラントの装着割合を以下の通りです。20代においてはインプラント治療のみが行われているデータになっていますが、筆者の実感とは異なります

20代で入れ歯、ブリッジ、インプラントを装着している人の割合
令和4年度の歯科疾患実態調査の結果によると、20代の欠損補綴治療は100%インプラントとなっています。入れ歯やブリッジは使用されていません。そもそも喪失歯が少ない年代ですので、サンプルによってデータが偏っている可能性があります。

20代の部分入れ歯と総入れ歯の使用割合

20代で入れ歯を使っている割合は、全体からみれば少ないものの、事故や先天的欠如、重度のむし歯による抜歯などが原因で入れ歯が必要となる場合もあります。

20代の入れ歯装着者は、令和4年度歯科疾患実態調査によると0%です。筆者の実感としても、20代で入れ歯を使用している患者さんはごくまれです。

20代で入れ歯を装着している人の割合
20代の入れ歯の装着割合は総入れ歯、部分入れ歯ともに0%です。

20代のブリッジの使用割合

令和4年度の歯科疾患実態調査によると20代のブリッジの使用割合は0%です。しかし、この値は統計調査のサンプルによる問題と考えられます。前回調査の平成28年度歯科疾患実態調査では、20代前半のブリッジ使用割合は1.4%、20代後半のブリッジ使用割合は4.7%となっています。

近年の喪失歯数の変化は、変わらないか微減傾向であることから、ブリッジの使用割合が大幅に減少することは考えにくいです。筆者の実感からしても、平成28年度の調査結果が現状を表していると思います。

20代でブリッジを装着している人の割合
20代のブリッジの装着割合です。20〜24歳では0%25〜29歳では0%です。しかし、平成28年度の歯科疾患実態調査では、20〜24歳では1.4%、25〜29歳では4.7%となっており、この数値のほうが実態を表していると考えられます。

20代のインプラントの使用割合

令和4年度歯科疾患実態調査によると、20代前半のインプラントの使用割合は0%、20代後半のインプラントの使用割合は2.6%です。

平成28年度の前回調査では、20代30代ともにインプラント装着割合が0%だったことを考えると、若年者で欠損補綴治療としてインプラントを選択する人が増えているといえるでしょう。

20代でインプラントを装着している人の割合
20代のインプラントの装着割合です。20〜24歳では0%25〜29歳では2.6%です。前回調査と比較しても、20代におけるインプラント治療は微増傾向にあります。

20代の平均抜歯数(喪失歯数)

20代で歯を失う本数は平均的には非常に少なく、1人平均喪失歯数は1本未満です。20代の抜歯原因は、多くの場合虫歯であることが推察されます。

20代の1人平均喪失歯数
20〜24歳

0.3歯

25〜34歳

0.4歯

第2回 永久歯の抜歯原因調査 概要と主な結果

30代の入れ歯・ブリッジ・インプラントの装着割合

30代で歯を失った場合の、入れ歯・ブリッジ・インプラントの装着割合を以下にまとめます。

30代で入れ歯・ブリッジ・インプラントを装着している人の割合
30代では、多くの方がブリッジを選択していることがわかります。入れ歯については、30代後半のみで装着している方がいることがわかります。総入れ歯の装着率は0%で、30代では全ての歯を失うことはほとんどないといえるでしょう。

30代の部分入れ歯と総入れ歯の装着割合

30代における入れ歯の使用者は少数派であるものの、30代後半では部分義歯を必要とするケースがしばしば見受けられます。欠損歯数が少ないため、統計上は総入れ歯の人はいないとされています。

日々の臨床実感としても少数ではありますが、部分入れ歯を装着している30代の患者様を見かけることはあります。その場合でも、大抵は1〜2本の少数欠損がほとんどです。

30代で入れ歯を装着している人の割合
30代の入れ歯の装着割合です。30代前半では総入れ歯0%、部分入れ歯0%で、30代後半では総入れ歯0%、部分入れ歯1.2%です。30代後半では入れ歯を使用する可能性があることを示しています。

30代のブリッジの使用割合

全ての欠損補綴治療のうち、30代でのブリッジ使用している割合を以下に示します。30代で最も多い欠損補綴治療はブリッジです。

30代でブリッジを装着している人の割合
30代のブリッジの装着割合です。30代前半では6.7%30代後半では4.8%です。統計上、30代前半よりも30代後半の装着率が減少していますが、実際には年齢とともに装着割合も増加すると考えられます。

30代のインプラントの使用割合

令和4年における30代のインプラント装着割合を以下に示します。

30代でインプラントを装着している人の割合
30代のインプラントの装着割合です。30代前半では1.3%30代後半では0%です。30代でのインプラントの使用割合は、入れ歯と同程度です。

年齢の増加に伴い、インプラントの装着割合は減少していますが、これは統計上の母集団による影響も考えられます。

筆者の臨床実感としても、35〜39歳におけるインプラント装着割合は0%ではないと考えます。少数ではありますが、30代後半でインプラント治療を行っている人はいらっしゃいます。

前回調査の「平成28年の歯科疾患実態調査」では、インプラント装着割合は、30〜34歳と35〜39歳の両方で0%でしたので、30代のインプラント使用割合は増加傾向にあると考えられます。

厚生労働省 平成28年度歯科疾患実態調査

30代の平均抜歯数(喪失歯数)

30代における抜歯数は1歯未満です。歯科疾患実態調査では抜歯について25〜34歳、35〜44歳という階級が設定されています。厳密には20代後半から40代前半までの抜歯数ですが、参考になることに違いはありません。

30代の1人平均喪失歯数
25〜34歳

0.4歯

35〜44歳

0.6歯

40代の入れ歯装着割合

40代では、入れ歯の装着割合が微増します。さらに総入れ歯を装着する人も現れてきます。40代の部分入れ歯の装着割合は0.4%、総入れ歯の装着割合は0.8%です。

40代で歯を失った場合の治療法について、下記の記事でまとめています。

50代の入れ歯装着割合

50代になると、部分入れ歯の装着割合が大幅に増加します。50代の部分入れ歯の装着割合は6.8%、総入れ歯の装着割合は0.7%になります。

50代で歯を失った場合の治療法について、下記の記事でまとめています。

60代の入れ歯装着割合

60代の特徴は、入れ歯の装着率の急増です。50代と比較して、部分入れ歯で約3倍、総入れ歯で約4倍も装着者が増加しています。60代の部分入れ歯の装着割合は17.4%、総入れ歯の装着割合は3.0%です。

60代で歯を失った場合の治療法について、下記の記事でまとめています。

70代の入れ歯装着割合

70代では、入れ歯の使用が珍しくなくなります。70代の部分入れ歯の装着割合は34.8%、総入れ歯の装着割合は13.1%になります。

80代以上の入れ歯装着割合

80代以上では、入れ歯の使用が一般的になります。80代以上の部分入れ歯の装着割合は 46.3%、総入れ歯の装着割合は32.4%になります。

年代別入れ歯装着割合の比較

年齢別の入れ歯の装着割合
令和4年歯科疾患実態調査からみる年代別義歯装着割合

50代までは微増傾向ですが、入れ歯の使用割合は1割未満です。60代から特に入れ歯の使用割合は増加します。80代以上ではより入れ歯は一般的になります。

まとめ

入れ歯の装着する年代は人により異なるため、「何歳からが普通か」という議論は難しいです。例えば、ほぼ過半数が入れ歯を装着している70代以降では、入れ歯は普通に行われている治療と言うことができるのではないでしょうか?

Q&A

「30代の入れ歯・ブリッジ・インプラントの装着割合」に関連する質問を集めました。

20代で失う歯の本数(欠損歯数)は?

20〜24歳の1人平均喪失歯数は0.3本です。25〜34歳の1人平均喪失歯数は0.4本です。

20代の入れ歯の使用割合は?

20代の入れ歯の使用割合は0%です。

20代のブリッジの使用割合は?

20代のブリッジの使用割合は0%です。

20代のインプラントの使用割合は?

20〜24歳のインプラントの使用割合は0%です。25〜29歳のインプラントの使用割合は2.6%です。

30代で失う歯の本数(欠損歯数)は?

25〜34歳の1人平均喪失歯数は0.4本です。35〜44歳の1人平均喪失歯数は0.6本です。

30代の入れ歯の使用割合は?

30〜34歳の総入れ歯の使用割合は0%、部分入れ歯の使用割合も0%です。35〜39歳の総入れ歯の使用割合は0%、部分入れ歯の使用割合は1.2%です。

30代のブリッジの使用割合は?

30〜34歳のブリッジの使用割合は6.7%です。35〜39歳のブリッジの使用割合は4.8%です。

30代のインプラントの使用割合は?

30〜34歳のインプラントの使用割合は1.3%です。35〜39歳のインプラントの使用割合は0%です。

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