総入れ歯の平均年齢と使用割合を歯医者が徹底解説!

入れ歯ナビ:総入れ歯の平均年齢と使用割合
遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の歯医者「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

総入れ歯は「高齢者だけのもの」と思われがちですが、実際には何歳ごろから増え、どの年代でどれくらいの割合なのでしょうか?

本記事では公的なデータをもとに、総入れ歯の平均年齢と年齢別の装着割合をわかりやすく解説し、若い年代で必要になる背景や、後悔しない治療選びのポイントまでまとめます。

本記事で学べる歯科知識
  • 総入れ歯を使用している人の平均年齢
  • 年齢別の総入れ歯使用割合
  • 総入れ歯を初めて装着する年齢
目次

1分でわかる!総入れ歯の平均年齢と使用割合

総入れ歯は、「上下どちらか」または「上下両方」の歯を全て失った場合に行う治療法です。歯を失う原因として多いのは、歯周病(37.1%)、むし歯(29.2%)、破折(17.8%)の三疾患です。

総入れ歯を使用している人の推定平均年齢は、78.1歳。総入れ歯の年齢別使用割合は以下の表の通りです。

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年齢総入れ歯
装着者割合
30〜39歳0%
40〜49歳0.4%
50〜59歳0.7%
60〜69歳3.0%
70〜79歳13.1%
80歳以上32.4%
年齢別の総入れ歯の使用者の割合(令和4年歯科疾患実態調査)

総入れ歯の使用割合は加齢と共に増え、60代以降では急速に増加していきます。80代以上では三人に一人が総入れ歯を使用しています。

総入れ歯ってどんな治療法?

総入れ歯の平均年齢と使用割合を紹介する前に、総入れ歯の基本的な情報を解説します。

総入れ歯が必要になる状況や、総入れ歯のメリット・デメリット、アフターケアについてまとめました。

総入れ歯とは

総入れ歯は、上顎または下顎の歯をすべて失ったときに使用する取り外し式の装置です。専門用語では全部床義歯(ぜんぶしょうぎし)や総義歯(そうぎし)とも呼ばれます。

歯の代わりになる人工歯(じんこうし)と、歯ぐきの代わりになる床(しょう)で、咀嚼と発音、見た目を回復します。

総入れ歯の基本構造は、歯ぐき部分の床と、歯の部分の人工歯からなります
ピンク色の部分が床(床)、白い部分が人工歯(じんこうし)です。

総入れ歯は「歯がない」状態を補う治療なので、残っている歯がある場合は部分入れ歯などが使用されます。

総入れ歯の詳しい構造については、下記の記事をご覧ください。

総入れ歯が必要になる状況

総入れ歯が必要になるのは、歯周病やむし歯などで歯が失われ、残った歯だけでは噛み合わせを維持できなくなったときです。

歯科疾患実態調査でも、年齢が上がるほど1人あたりの喪失歯が増え、65〜69歳で平均4.7本、75〜79歳で平均8.4本、85歳以上で平均13.7本と増加します。

全ての歯がある場合は、上下合わせて28本ですので、85歳以上では約14本の歯を失うとすると、上下どちらかの歯が全てないことも考えられます。

令和6年歯科疾患実態調査

総入れ歯のメリット・デメリット

総入れ歯のメリットには、外科手術を伴わずに治療を受けられる点があります。日本においては保険治療でも総入れ歯を作製できますので、治療費を安く抑えられる点も魅力です。

一方デメリットは、歯ぐきと粘膜で支えるため、硬い物が噛みにくい、外れやすい、痛みが出やすいことがある点です。慣れるまでは違和感を強く感じたり、食事の温度や味を感じにくくなったと感じたりする人もいます。

総入れ歯のアフターケア

総入れ歯は「入れて終わり」ではなく、毎日のケアと定期的な調整が必要です。特に新しく入れ歯を作った直後には、痛みや外れやすさが生じやすいため、数回の調整が必要になります。

総入れ歯の清掃は毎日行い、就寝時は外して歯ぐきを休ませるのが基本です。顎の骨と歯ぐきは時間とともに変化するため、作ってから数年経過すると、修理や作り直しが必要になることもあります。

総入れ歯の使用に違和感があれば、我慢せず早めに歯医者を受診してください。

総入れ歯の種類と費用

総入れ歯は、保険治療の総入れ歯と、自費治療の総入れ歯に大別されます。

ここではそれぞれの特長と、大まかな治療費について解説します。

保険の総入れ歯の特徴

保険の総入れ歯は、一定のルールの範囲で作製されるため、全国どこでも似通った材料と手順で作られます。一般的にレジンと呼ばれるプラスチックで作製されることが多いです。

プラスチックをメインに使用するため、強度を保つために厚く作る必要があり、違和感が強くなりやすい傾向があります

費用は治療内容によって多少変動しますが、どこの歯医者で作っても大きな差は出にくいです。

費用負担で差が出やすいのは、健康保険の自己負担割合の違いです。 69歳以下では負担割合は3割、70〜74歳では2割、75歳以上では1割負担です。69歳以下で総入れ歯を作る場合に比べ、75歳以上では、負担額は1/3まで安くなります。

自費の総入れ歯の特徴

自費の総入れ歯は、材料と設計の自由度が高く、薄さや強度、装着感、見た目に配慮して、徹底的に作り込むことができます。

例えば、金属を使用した金属床義歯(きんぞくしょうぎし)では、床を薄く作りやすく、熱が伝わりやすい利点があります。

保険治療と自費治療における総入れ歯の違い
保険治療の総入れ歯と自費治療の総入れ歯(金属床義歯)の見た目の違い。

費用は入れ歯の種類と入れ歯を作る歯医者で大きく変わるため、自費の総入れ歯を作る際には事前に治療費を確認することがおすすめです。

代表的な総入れ歯の種類と費用

保険治療の総入れ歯では、上下どちらか一方で約12,000円(窓口負担3割)です。歯が一本もなく、上下で総入れ歯を作る場合は、約24,000円です。

自費治療の総入れ歯では、種類や歯医者の違いによって価格差は大きいですが、一般的に上下どちらか一方の総入れ歯で約50〜100万円でしょう。

金属床義歯やシリコンデンチャーでは約50〜60万円、BPSデンチャーでは80〜100万円、インプラントオーバーデンチャーでは金属床義歯の金額に加えて約30〜120万円のインプラント治療費が加算されます。

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自費治療の総入れ歯の種類治療費目安
金属床義歯50〜60万円
シリコンデンチャー50〜60万円
BPSデンチャー80〜100万円
インプラントオーバーデンチャー90〜180万円
自費治療で総入れ歯を作製する際の治療費目安(上下どちらか一方)

総入れ歯の平均年齢と総入れ歯になる人の特長

総入れ歯を装着している人の、推定平均年齢は78.1歳です。いきなり総入れ歯になることは少なく、まずは喪失歯数が増加していき、徐々に食べものがかみにくくなっていきます。

日本においては若年者における総入れ歯使用は非常にまれですが、うつ病や教育水準、喪失歯の多さなどがリスクとなり、若年者でも総入れ歯となることがあります。

総入れ歯の平均年齢は?

令和6年度歯科疾患実態調査の結果をもとに、総入れ歯の平均年齢を求めました。

総入れ歯を装着している人の推定平均年齢は78.1歳です。

年齢階級別割合(%)と被調査者数から、各階級の総入れ歯装着者数を推定し、階級中央値を用いた加重平均により平均年齢を算出しました。85歳以上の開放階級については、総務省人口推計(2024年)に基づく85歳以上の年齢分布から推定した平均年齢(約89.7歳)を代表値として用いています。

総入れ歯が必要になりやすいサイン

総入れ歯が必要になりやすいサインは、残った歯がグラつく、食べものをうまくかめない、大きな部分入れ歯をすでに使用していることなどです。

年齢が上がるほど喪失歯は増えますので、喪失歯が増えてきたら定期的に歯医者に通院し、残っている歯を守る対策を講じましょう。

早い年齢で総入れ歯になる背景

日本においては早い年齢で総入れ歯になることは非常にまれです。

海外のデータを見てみると、うつ病や全身的な不健康さ、教育水準の低さなどの社会的・全身的な要因と、早い年齢での総入れ歯が関連しているしています。

口腔内の要因としては、口腔衛生状態の悪さ喪失歯の多さが、早い段階の無歯症(歯が1本もない状態)と関連があるとしています。

Population prevalence of edentulism and its association with depression and self-rated health

Risk factors for total tooth loss in the United States; longitudinal analysis of national data


年齢別の総入れ歯装着割合

総入れ歯を装着している人は40代から現れ始め、60代からは急激に増加します。80代以上では、約1/3の方が総入れ歯使用しています。

年齢別の入れ歯の装着割合
総入れ歯と部分入れ歯の年齢別の装着割合。総入れ歯では60代以降に、急激に装着者数が増加することがわかります。

ここでは、令和4年の歯科疾患実態調査から、各年代の総入れ歯装着割合を詳しく見ていきましょう。

令和4年歯科疾患実態調査

30代の総入れ歯割合

30代の総入れ歯の使用割合は0%です。

しかし、これは統計上のデータですので、30代で入れ歯を使用している人がいないというわけではありません。少数ではありますが、30代で総入れ歯を使用している人もいるでしょう。

筆者の経験では、30代で総入れ歯を装着している方に出会ったことはありません。

30代の総入れ歯以外の治療法の割合を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

40代の総入れ歯割合

40代の総入れ歯の使用割合は約0.4%です。

40代で総入れ歯が必要になるケースは、歯周病の急速な進行や多数歯のむし歯など、口腔内のダメージが大きいことが多いです。

特に歯周病は自覚症状が乏しいまま進むため、痛みがなくても定期的な検診で口腔内の状態をチェックしてもらう必要があります。

40代と50代の総入れ歯以外の治療法の割合を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

50代の総入れ歯割合

50代の総入れ歯の使用割合は約0.7%です。

まだ装着者数は少ないものの、50代では総入れ歯を使用している人が少しずつ現れ始めます。

60代の総入れ歯割合

60代の総入れ歯の使用割合は約3.0%です。

60代では装着者数がしっかりと増加し始め、使用割合は50代の4倍にもなります。

70代の総入れ歯割合

70代の総入れ歯の使用割合は約13.1%です。

総入れ歯の使用割合は、60代よりも10ポイント以上も増加します。70代では、総入れ歯はそこまで珍しい治療ではなくなってきます。

80代以上の総入れ歯割合

80代以上の総入れ歯の使用割合は32.4%です。

80代以上の1/3程度は総入れ歯を使用していることが分かります。


総入れ歯以外の治療法

上下どちらか一方または上下両方の歯を失った場合の治療法には、インプラント、インプラントオーバーデンチャー、総入れ歯があります。

本項では、それらの特徴を解説します。

インプラント

インプラントは顎の骨に土台を入れ、その上に人工の歯を固定して噛む機能を回復する方法です。総入れ歯と比べて、噛む力を出しやすく、外れにくい利点があります。

一方で外科手術が必要で、全身状態や顎の骨の量などによっては治療が困難なケースもあります。

インプラントは原則自費治療となりますので、全ての歯を失った場合の治療費は高額になります。全てをインプラントで治療した場合には、約500〜1,000万円の治療費となるでしょう。

インプラントオーバーデンチャー

インプラントオーバーデンチャーは、インプラントと総入れ歯を組み合わせた治療法です。少数のインプラントを顎の骨に固定し、そのインプラントと総入れ歯を固定することで、外れにくい入れ歯を実現します。

入れ歯の中では非常に外れにくく、インプラントのサポートにより、かむ力もしっかりかけることができます。

全てをインプラントのみで治療する場合と比べ、使用するインプラント数を節約できるため、治療費の抑制が可能です。歯が1本もなく、上下にインプラントオーバーデンチャーを装着する場合、約250〜300万円の治療費になることが予想されます。

治療法の比較

総入れ歯、インプラント、インプラントオーバーデンチャーは、かみやすさや外れにくさ、手術の有無、費用などがそれぞれ異なります。

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インプラントインプラント
オーバーデンチャー
総入れ歯
かみやすさかみやすいかみやすいかみにくい
外れにくさ外れない外れにくい外れることもある
手術必要必要不要
治療費高価中程度安価
30代における歯の種類別(前歯・奥歯)の抜歯割合

総入れ歯は手術なしでできる一方、かみやすさや外れやすさがネックです。総入れ歯の安定には、高度な技術が必要です。入れ歯治療を専門的に行っている先生が作る総入れ歯であれば、必ずしも使いにくいとは限りません。

総入れ歯が必要になる原因

総入れ歯は多くの歯を失うった場合に必要な治療法です。

そもそも、歯を失う主な原因には、むし歯、歯周病、破折(折れる)があります。本項では、歯を失う原因にフォーカスしていきます。

第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書

むし歯で歯を失う割合と年齢

むし歯は抜歯の主な原因の一つであり、全体の29.2%がむし歯により抜歯されています。

年齢との関係を見ると、むし歯は若い年代ほど主原因になりやすく、年齢が上がるほどその割合は低下していきます。具体的には、う蝕の割合は40歳以降に減少し、80歳以降で再びやや増加する傾向を示します。

歯周病で歯を失う割合と年齢

抜歯の主原因として最も多かったのは歯周病で、全体の37.1%です。

年齢階級別にみると、35歳以降で年齢とともに歯周病による抜歯の割合が高くなり、60歳以降では高い状態が維持されます。40歳以降では歯周病を原因で抜歯となることが多く、中高年から高齢期にかけての歯周病対策が歯の寿命に直結します。

歯周病は進行すると歯の動揺やかみ合わせのサポートの喪失につながり、複数歯が連鎖的に失われるリスクが上がるため、早期発見・継続管理が重要です。

破折で歯を失う割合と年齢

破折は抜歯の主原因全体の17.8%で、う蝕・歯周病に次いで多い原因でした。年齢との関係では、破折も歯周病と同様に35歳以降で割合が上昇し、60歳以降はほぼ一定です。

また、年齢だけでなく歯の状態も重要で、歯髄(歯の神経)のある歯に比べて、歯髄を失った歯(無髄歯)では破折の割合が顕著に大きいことがわかっています。

55歳以上では現在歯数が少なくなるにつれて歯周病による抜歯が増え、破折による抜歯も多くなる傾向があります。残っている歯を長く守るためには、歯髄を守ることが第一優先となります。

入れ歯にならないために

総入れ歯になる年齢を遅らせるには、むし歯と歯周病を「作らない・進めない」ことが重要です。むし歯の進行を抑制することは歯髄を守ることにもつながります。

セルフケアに力をいれることは当然ですが、早期治療、フッ化物の活用、定期検診の受診、禁煙などを包括的な対策が有効です。

「総入れ歯の平均年齢と使用割合」のまとめ

総入れ歯は上下いずれかの歯をすべて失ったときに用いる取り外し式装置で、咀嚼・発音・審美性を補います。

令和6年度歯科疾患実態調査をもとに推定した総入れ歯装着者の平均年齢は78.1歳です。総入れ歯を使用している人は40代から現れ60代以降に特に増加し、80代以上では約3人に1人が総入れ歯を使用しています。

保険治療による総入れ歯は費用を抑えやすい一方、装着感に課題が出ることもあります。自費治療の総入れ歯は、材料や設計の自由度は高いですが、治療費が高価になりやすい点が特徴的です。

総入れ歯は作って終わりではなく、適切なセルフケアと歯医者での調整を続け、快適に入れ歯を使用していく努力が必要です。

「総入れ歯の平均年齢と使用割合」のQ&A

総入れ歯を初めてつける年齢は?

令和6年の歯科疾患実態調査によると、初めて総入れ歯を使い始める年齢は45〜49歳です。令和4年のデータでも、総入れ歯を使い始める年齢は45〜49歳ですが、その割合は減少しており、40代後半でも総入れ歯を装着している人は減少しています。

入れ歯を使っている人の平均年齢は?/入れ歯は平均何歳から入れますか?

令和6年の歯科疾患実態調査のデータから、平均年齢を推定すると、78.1歳となります。総入れ歯を装着している人の平均年齢は78.1歳であることを意味しています。

総入れ歯になってしまう割合は?/総入れ歯を使っている人の割合は?

令和6年の歯科疾患実態調査によると、15歳以上に人のうち、6.5%が総入れ歯を装着しているとされています。現在の日本は超高齢社会であり、全人口における高齢者の占める割合が多くなっていることも影響しています。

総入れ歯になる人はどのような人が多いですか?

総入れ歯になる人の一番の特長は「年齢」です。高齢であるほど総入れ歯の装着割合が増加します。若い年齢にもかかわらず歯を多く失ってしまうこともあり、その原因には、うつ病や全身の健康状態、教育水準の低さ、口腔衛生状態の悪さなどがあるとされています。

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