専門家がおすすめする、部分入れ歯や総入れ歯のお手入れの頻度が知りたくありませんか?
本記事では、「入れ歯のお手入れが毎日必要か?」という疑問に歯医者が答えます。入れ歯のお手入れ方法と正しい頻度を知って、入れ歯をきれいに使いましょう。
- 入れ歯のお手入れの頻度
- 入れ歯のお手入れを怠るリスク
- 毎回・毎日・定期的にやる入れ歯のお手入れ内容
1分でわかる!部分入れ歯のお手入れは毎日必要か?




入れ歯のお手入れは毎日必要です。
毎食後には少なくとも水で入れ歯をすすぎ、一日一回は徹底した入れ歯お手入れを行います。入れ歯の汚れであるデンチャープラークがこびりついてしまうと、簡単には落とせなくなってしまいます。入れ歯用ブラシを用いた機械的清掃と、入れ歯洗浄剤を使った化学的洗浄を併用して、入れ歯についた汚れを毎日落とすことが大切です。
入れ歯のお手入れを怠ってしまうと、義歯性口内炎や口腔カンジダ症、誤嚥性肺炎の発症リスクが上昇する可能性があります。毎食後のケア、毎日のケア、定期検診を実践し、健康なお口を目指しましょう。
部分入れ歯のお手入れは毎日しなくても良い?
入れ歯の手入れは、お口の健康を保つために非常に重要です。
天然の歯と同じように、入れ歯にも食べかすやプラークが付着します。これを毎日きちんと取り除くことで、入れ歯んを清潔に保ち、長持ちさせることができます。
入れ歯のお手入れ不足は、さまざまなトラブルの原因となるため、毎日のケアが必要不可欠です。
部分入れ歯を毎日お手入れしないとどうなる?
入れ歯の毎日のお手入れを怠ってしまうと、入れ歯に汚れが付着してしまいます。入れ歯に付着した汚れは、デンチャープラークと呼ばれ、時間がたつにつれて簡単には落とせない頑固汚れになってしまいます。
プラークは細菌のかたまりで、自分の歯(天然歯)にも、入れ歯にも付着します。天然歯に付着するプラークに比べて、デンチャープラークでは真菌類(カビ)の占める割合が大きいことが分かっています。また、デンチャープラークには、胃潰瘍や胃癌とも関わりがあるピロリ菌も検出されています。
毎日のお手入れを行わないと、デンチャープラークがたまってしまい、さまざまな問題を引き起こします。正しいお手入れの頻度と方法を守ることが大切です。
入れ歯のお手入れは旅行先でも毎日行わなければいけません。旅行用の入れ歯ケアグッズを知りたい方は下記の記事をご覧ください。

みんなは入れ歯を毎日お手入れしているのか?
平成8〜9年にかけて、入れ歯のお手入れに関するアンケート調査が行われました。対象は高齢者施設に入所する2,826名です。
入れ歯のお手入れの頻度を、「清掃しない」、「時々」、「毎日」、「毎食後」、「その他」の5段階に分けて調査しました。その結果は以下の通りです。

一日に少なくとも一回以上入れ歯をお手入れしている人の割合は、「毎日」+「毎食後」=86%です。ほとんどの方が、毎日入れ歯のお手入れを行っていることがわかります。
毎日の部分入れ歯のお手入れを怠ると起きやすいトラブル
入れ歯のお手入れを怠ることで、入れ歯そのものだけでなく、全身の健康にトラブルが生じます。
お口に対する悪影響として、義歯性口内炎や口腔カンジダ症などが挙げられ、全身への悪影響として誤嚥性肺炎が挙げられます。
義歯性口内炎
義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)とは、真菌類(カビ)などの感染により、入れ歯と接触する歯ぐきに口内炎ができてしまう病気です。
入れ歯のお手入れを行わないと、入れ歯にデンチャープラークがたまり、義歯性口内炎になりやすくなることがわかっています。
口腔カンジダ症
口腔カンジダ症は、カンジダ菌によって引き起こされる感染症です。カンジダ菌は健康な人の口腔内にも存在し、その割合は3~75%といわれています。
加齢や病気などによって全身状態が悪化し、カンジダ菌が口腔内で増殖すると、口腔カンジダ症が発症します。症状としては、口腔粘膜の発赤(赤く腫れる)や痛み,味覚異常などが生じます。
口腔内のカンジダ菌は、入れ歯を使用していない方に比べて、入れ歯を使用している方に多く見つかります。入れ歯を使用することが、カンジダ菌が増殖するリスクとなることを意味します。
入れ歯のお手入れの頻度と、口腔カンジダ症の発症率の関係性については関連が否定されていますが、毎日の正しいお手入れが必要なことには疑う余地がありません。
カンジダ菌をはじめとするカビが入れ歯に生えてしまった場合には、次亜塩素酸ナトリウム系の入れ歯洗浄剤が効果的です。入れ歯についたカビの取り方については下記の記事をご覧下さい。

口臭
入れ歯に付着したデンチャープラークには、多くの細菌が含まれています。細菌の死骸や排せつ物などが悪臭を発生させ、口臭を強くします。
入れ歯を毎日お手入れして、お口の中もきれいにすることで、口臭が少なくなることが分かっています。
むし歯
部分入れ歯を装着していると、特に入れ歯の鉤歯(こうし)がむし歯になりやすいです。
鉤歯(こうし)とは、部分入れ歯のクラスプがひっかかる歯です。部分入れ歯を外れにくくするために、鉤歯にはクラスプが装着されます。
ブリッジの支台歯(しだいし)が二年後にむし歯になる確率は9%であるのに対し、入れ歯の鉤歯では59%にもなります。

支台歯(しだいし)とは、ブリッジの土台となる歯です。一般的には、失った歯の前後が支台歯となります。
入れ歯も鉤歯も毎日丁寧にお手入れすることで、むし歯になるリスクを下げることができます。
歯周病
部分入れ歯を使用すると、残った歯に汚れがたまりやすくなり、歯周ポケットが深くなりやすいです。毎日の歯磨きと一緒に、部分入れ歯も毎日お手入れしましょう。
歯磨きだけをしても、汚れた入れ歯を装着していては意味がありません。歯周病の原因菌は入れ歯にも付着しますので、お口と入れ歯の両方をきれいにして、歯周病を予防しましょう。
The effect of removable partial dentures on periodontal health of abutment and non-abutment teeth
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、唾液や飲食物などが誤って肺に入ってしまう(誤嚥)ことで引き起こされる肺炎です。日本においては、誤嚥性肺炎は死亡原因の第6位であり、死因の3.8%を占めています。
入れ歯を毎日お手入れすることで、誤嚥性肺炎を予防できることがわかっています。東北大学の研究結果によると、入れ歯を毎日清掃する人に比べて、入れ歯を毎日清掃しない人では、肺炎発症のリスクが1.3〜1.58倍高くなるとのことです。

特に高齢では肺炎発症のリスクが高くなることが分かっていますので、年を重ねるほど毎日の入れ歯のお手入れが大切です。
毎日実践!部分入れ歯の正しいお手入れ方法
入れ歯を快適に、安全に使い続けるためには、正しい手入れ・洗浄方法を知って実践することが重要です。
日々のケアと定期的なメンテナンスで、入れ歯だけでなくお口全体の健康を守りましょう。ここでは、毎回・毎日・定期的に行うべき基本の手入れ方法について解説します。
部分入れ歯のお手入れに必要な道具
正しいお手入れにはいくつかの道具が必要です。正しい道具を使用しなければ、きれいに汚れは落ちません。まずは道具をしっかりと揃えましょう。
- 入れ歯用ブラシ
- 入れ歯用歯磨き粉
- 入れ歯洗浄剤
- 入れ歯ケース
毎回やる部分入れ歯のお手入れ
食事をするたびに、入れ歯には食べかすが付着します。そのため、食後は毎回入れ歯をはずして流水で軽くすすぎましょう。可能であれば、入れ歯用歯磨き粉と入れ歯用ブラシを使用して機械的清掃を行うと完璧です。
入れ歯用の歯磨き粉を使用したお手入れ法については、下記の記事をご覧ください。
部分入れ歯を使用している人は、一緒に天然歯の歯磨きとフロッシングを行いましょう。総入れ歯の場合は、お口をゆすぐようにするとよいでしょう。
毎日やる部分入れ歯お手入れ
入れ歯の毎日のお手入れとして、就寝前には必ず丁寧に入れ歯を清掃しましょう。
入れ歯のお手入れは、機械的清掃と化学的清掃に分けられます。
機械的清掃とは入れ歯用ブラシで入れ歯をこすり洗いすることで、化学的清掃とは入れ歯洗浄剤で入れ歯を清掃することです。現在では、毎日一回はしっかりと入れ歯をお手入れすることが推奨されています。
毎日のお手入れの具体的なステップは以下の通りです。
入れ歯用歯磨き粉(泡タイプの入れ歯洗浄剤)を入れ歯につけます。使用量は製品によって異なりますが、一般的には、入れ歯の大きさに応じて1〜2プッシュほどです。入れ歯用歯磨き粉を使用することで、入れ歯を傷つきにくくなります。
入れ歯用ブラシで入れ歯をこすります。特に部分入れ歯のバネ周囲や入れ歯の内面などは磨き残しが多い部分ですので、念入りに磨きます。入れ歯用ブラシには大きさの異なるブラシが裏表に用意されています。細かい部分は細いブラシで、広い面は太いブラシで磨くと効率的です。

入れ歯用歯磨き粉と入れ歯用ブラシを使用して、浮き上がった汚れを流水で洗い流します。
機械的洗浄が終わった入れ歯を、入れ歯洗浄剤を入れた水につけます。こするだけでは落ちきらなかった汚れやにおいなどを徹底的に除去します。入れ歯を漬ける時間は製品によって異なりますが、「酵素入りポリデント」では5分以上となっています。
入れ歯洗浄剤の効果で浮き上がった汚れを再度こすり洗いします。これで入れ歯の洗浄は完璧です。
入れ歯のお手入れ方法の詳細は下記の記事で解説しています。

定期的にやる部分入れ歯のお手入れ
部分入れ歯を使用している人は、残っている歯のクリーニングと検診のために定期的に歯医者を受診しましょう。総入れ歯の場合でも、口腔機能の確認が定期的に必要な場合があります。
入れ歯の適合具合は日々変化していきます。部分入れ歯も総入れ歯も、定期的に歯医者でチェックを受け、大きな問題が生じる前に対処していきましょう。
家庭では取り切れない入れ歯の汚れも、歯医者では落とせる場合があります。歯医者では超音波洗浄器と専門的な薬剤で入れ歯を洗浄可能です。
気になることがある場合は、遠慮せずに定期検診の際に、歯医者に相談してください。
毎日行う部分入れ歯のお手入れだからこそ気を付けるポイント
ちょっとしたミスでも、毎日繰り返すと入れ歯を傷つけたり、お口が不健康になったりすることがあります。
毎日行うお手入れだからこそ、正しいケアを徹底しましょう。
熱湯は使用してはいけない
煮沸消毒などの温度による消毒法は入れ歯を変形させてしまいます。入れ歯の消毒は入れ歯洗浄剤で行いましょう。常温の水でも問題ありませんが、ぬるま湯を使用することで汚れが落ちやすくなります。
入れ歯の内面とバネ周辺は汚れがたまりやすい
入れ歯の歯ぐきと接触する面や、部分入れ歯の金属パーツの周囲は汚れがたまりやすいです。細かな部分は入れ歯用ブラシの細い毛先を使用してきれいにしましょう。
清掃中に落とさないように注意する
入れ歯を洗うときは、柔らかいものの上で洗うか、お水を張った上で洗うようにします。床に入れ歯を落としてしまうと、入れ歯の変形や破損につながります。
まとめ│部分入れ歯は毎日お手入れが必要
部分入れ歯と総入れ歯は、毎日のお手入れが推奨されています。お手入れを怠ってしまうと、入れ歯の調子が悪くなるだけでなく、大きな病気にもつながってしまいます。
機械的清掃と化学的清掃を組み合わせ、毎日正しいお手入れを実践していきましょう。
Q&A
「部分入れ歯のお手入れは毎日必要か?」に関連する質問を集めました。
- 入れ歯のポリデントは毎日使用する必要がありますか?
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ポリデントは化学的清掃に用いられる入れ歯洗浄剤です。入れ歯洗浄剤を用いた化学的清掃は、毎日行うことが推奨されています。
- 部分入れ歯を洗う頻度は?
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部分入れ歯は毎食後お手入れするのが理想的です。毎食後が難しい場合でも、少なくとも一日一回は入れ歯用ブラシと入れ歯用洗浄剤を使用した丁寧な清掃を行いましょう。
- 入れ歯の洗浄は毎日するべきですか?
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部分入れ歯も総入れ歯も毎日洗浄するべきです。
- 部分入れ歯は毎日つけるべきですか?
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部分入れ歯は、毎日入れ歯洗浄剤につけ置きするべきです。最近では泡タイプのつけ置きしない入れ歯洗浄剤も販売されていますが、つけ置きタイプの方が確実に洗浄でき、コストも抑えられます。
- 部分入れ歯のメンテナンス頻度はどのくらいですか?
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入れ歯の状態により異なりますが、一般的には3〜6か月ごとに定期検診を行うことが多いでしょう。定期検診の際には、入れ歯の状態確認だけではなく、お口の中のクリーニングも行います。