入れ歯を紛失!?なくさないための対策と保険適用での作り直し 

入れ歯を紛失した際の保険適用の可否
遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の歯医者「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

入れ歯は毎日の食事や会話に欠かせない大切なアイテムですが、ふとした瞬間につい紛失してしまうことがあります。特に高齢の方や介護施設、病院での生活では、思いもよらぬシーンでなくしてしまうことも珍しくありません。

そんなトラブルを防ぐための工夫や、入れ歯を紛失した時にまず取るべき行動についてご紹介します。また、いざという時に気になる「入れ歯の再作製」に関する保険適用の条件や例外についても、わかりやすく解説しています。

本記事で学べる歯科知識
  • 入れ歯を紛失しやすい場面
  • 入れ歯を紛失しないための対策
  • 入れ歯を紛失した際の保険適用の可否
目次

「入れ歯の紛失対策と保険適用の可否」の結論

入れ歯の紛失対策は、ティッシュペーパーに包んで入れ歯を保管しないことと、いつも同じルーティーンで入れ歯を管理することです。

紛失した入れ歯を作ってから6か月以上経過していれば、保険適用で新しい入れ歯が作製可能です。紛失した理由が、認知症や災害などであれば、例外的に6か月以内でも入れ歯の新製が認められます。

入れ歯を紛失しやすいシーン

どんなときに入れ歯をなくしやすいか、歯科医師の経験から考えてみました。

入れ歯を紛失しやすいシーン
  • 入れ歯をティッシュペーパーに包んで置いてしまった
  • 旅行先のホテルに忘れてしまった
  • 認知症でどこに入れ歯を置いたかわからない
  • 介護施設病院などで入れ歯がなくなった

これらは、実際に患者さんから聞いたことがある紛失理由です。

入れ歯を紛失しないための対策

入れ歯の紛失を防ぐには、どうしたら良いでしょうか。専門家の目線からアドバイスをまとめました。

入れ歯を紛失しないためにできることには、入れ歯をティッシュペーパーで包まないこと、決まった管理方法を徹底すること、介護施設や病院では入れ歯の管理方法をマニュアル化することなどが挙げられます。
入れ歯を紛失しないための対策の一例です。入れ歯をティッシュで包まない、入れ歯の保管などの管理方法をいつも同じにする、介護施設や病院などでは入れ歯の取り扱いについてマニュアル化をすることなどが対策として挙げられます。

入れ歯をティッシュペーパーに包まない

入れ歯をティッシュペーパーに包んで保管すると、紛失する可能性が高いです。

使用済のティッシュペーパーは、通常であればすぐに捨てるものです。ご自身で捨ててしまう場合のほか、ご家族が誤って捨ててしまうことがあります。特に小さな部分入れ歯では注意が必要です。

いつもと同じルーティーンを守る

ご自宅でも、旅行先でも、いつもと同じルーティーンを守ることが重要です。

朝起きたら入れ歯を装着し、就寝前に入れ歯を洗浄液につけるなどのルーティーンを普段から意識すると、旅行先でも安心です。荷物にはなってしまいますが、普段使用している入れ歯ケア用品も持参するようにしましょう。

介護施設や病院ではマニュアルを整備することが大切

介護職員や看護師は、毎日多くの入れ歯を取り扱います。誰の入れ歯か分からなくなったり、入れ歯がなくなったりすることを防ぐにはマニュアル化という手があります。

入れ歯への名入れは比較的安価で、すぐにできることがほとんどです。特に総入れ歯の形状は似ていますので、使用者の名前が分かると安心です。

いつなくなったかが分からないと、どこを探すべきか検討もつきません。毎食後や自室からでるタイミングで、入れ歯が装着されていることを確認するのも入れ歯の紛失対策につながります。認知症などでは、口頭による確認だけではなく、目視で入れ歯が装着されているかを確認するとよいでしょう。

状況によっては、入れ歯を使用しないタイミングでは入れ歯を預かり、使用時に入れ歯をお渡しする施設もあります。介護施設・病院内で共通化したマニュアルを整備することが重要です。

それでも紛失した場合はまず探す

筆者の経験では、ベッド周りポケットから入れ歯が出てきたことがあります。枕の下やベッドフレームと布団の隙間、ポケットの中は一度確認してみましょう。

入れ歯を紛失した際の作り直しは保険適用か?

入れ歯を紛失した場合の保険適用の可否は、紛失した入れ歯をいつ作ったかによって異なります。本項では例外も含め、歯科医師が解説します。

紛失した入れ歯を作り直す際には、以前の入れ歯を作ってから6か月経過しているかどうかが一つの基準になります。認知症や災害などで紛失した場合には、例外的に保険適用が認められます。
紛失した入れ歯を再作製するときの保険適用の可否についてです。まずは以前の入れ歯を作ってから6か月経過しているかどうかが判断基準になります。つぎに、短期間での作り直しであっても、紛失理由が認知症や災害など、患者さんだけでは防げない理由であったかが保険適用の焦点となります。

入れ歯を新しく作る際の費用については、下記の記事をご参照ください。

紛失した入れ歯を作ってから6か月経過していれば保険適用

紛失した入れ歯を作ってから半年以上経過していれば、保険適用で新しい入れ歯が作製できます。いつ作った入れ歯か分からない場合は、かかりつけの歯科医院に問い合わせればすぐにわかります。

紛失した入れ歯を作った歯科医院とは別の歯科医院で作る場合も、前回の入れ歯作製から6か月以上経過している必要があります。

紛失した入れ歯が作ってから6か月以内であれば保険適用外

原則として半年以内の入れ歯作製は、保険適用となりません。保険治療と同等の入れ歯を10割負担で作製するか、歯科医院が設定している自費治療の入れ歯を作製することになります。

入れ歯作製から6か月以内でも保険適用となる例外

紛失した入れ歯を作ってから6か月以内でも、保険適用で新しい入れ歯を作れる場合があります。作製から6か月以内でも保険適用となる例外は下記の通りです。

6か月以内でも入れ歯の再作製が保険適用となる場合
  • 認知症を有する患者や要介護状態の患者について、義歯管理が困難なために有床義歯が使用できない状況(修理が困難な程度に破折した場合を含む。)となった場合
  • ホ その他特別な場合(災害又は事故等)

患者さん自身では入れ歯の管理が難しい状態には、入れ歯を作製してから6か月以内に新しく入れ歯を作製することができます。災害や事故などで入れ歯を失った場合も同様です。

これらはあくまでも例外ですので、短期間に何度も紛失してしまった場合、保険適用が難しい場合があります。先に述べた、入れ歯紛失しない対策を施し、次からは入れ歯をなくさないように心掛けましょう。

厚生労働省北海道厚生局医療課 診療報酬

まとめ

まずは入れ歯を紛失しないように対策することが重要です。それでも紛失した場合には、紛失した入れ歯をいつ作ったのか確認しましょう。短期間で入れ歯を作り直さなけらばいけなくても、認知症や災害などで入れ歯を紛失した場合には保険適用となることがあります。

Q&A

「入れ歯の紛失対策と保険適用の可否」に関連する質問を集めました。

入れ歯を再作成するには保険がききますか?

前回入れ歯を作ってから、半年が経過していれば入れ歯の再作製は保険適用となります。

入れ歯を紛失したら保険適用は?

紛失した入れ歯がいつ作られたのかによって保険適用の可否が分かれます。半年以上経過していれば保険内で再作製ができます。半年以内の場合には、原則自費治療となりますが、認知症や災害などで入れ歯を失った場合には例外的に保険適用が可能です。

保険適用で入れ歯を作り直す費用はいくらですか?

部分入れ歯か総入れ歯かによって費用は異なりますが、約5,000〜12,000円です。

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