入れ歯で外食するときの注意点と食後のお手入れ│義歯が外れにくくなるコツとは?

入れ歯ナビ:入れ歯で外食・外出する際の注意点と食後のお手入れ
遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の歯医者「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

外食や旅行先では、入れ歯の脱落や食べかすの詰まり、洗浄のしにくさなど、思わぬトラブルが起こりがちです。

本記事では入れ歯で外食・外出するときのよくあるトラブルと対処法を解説しています。外出先での入れ歯のお手入れに悩んでいる人も多いと思います。

本記事が入れ歯のお悩みを抱えている方にとって有益な情報になれば幸いです。

目次

1分でわかる!入れ歯で外食するときの注意点と食後のお手入れ

入れ歯での外食や外出では、「外れやすい」、「食べにくい」、「話しにくい」、「洗いにくい」、「食べかすが詰まる」、「紛失した」などの問題が生じます。

一番大切なのは、歯医者でしっかりと入れ歯治療を行うことです。よくかめて外れにくい入れ歯ができたとしても、ふとしたときにトラブルが起こることがあります。問題が起こったときのために、予備の入れ歯や入れ歯安定剤を準備しておきましょう。痛みが生じた際には入れ歯の使用を控え、歯医者を受診します。

外食時には、餅やキャラメルなど粘着性の食べ物を避け、食品を小さく切って左右の奥歯でかむと入れ歯が安定しやすくなります。どのような入れ歯でも、すぐに上手には使えません。時間をかけて入れ歯の使い方に慣れていくことも重要です。

外出先ではうがいなどで口腔内の清潔を保ち、帰宅後に入れ歯用歯ブラシや洗浄剤で丁寧に手入れしましょう。入れ歯安定剤は使用量と正しい使い方を守り、過剰使用は避けることが大切です。

外食・外出時に起こりやすい入れ歯トラブルとは

外食中や外出先で起こる入れ歯トラブルは、慣れない環境や食事内容、入れ歯の状態が原因で発生しやすく、口腔内の快適さや会話・食事の質を低下させます。

義歯の安定性や適合が悪い場合では、外食時に特に問題となり、早めの治療が必要です。

外食中に入れ歯が外れる

外食中の入れ歯の脱落は、粘着性のある食品を食べているときや口を大きく開けるとき、前歯で食べ物をかみ切るときに生じやすいです。入れ歯の吸着不良や歯ぐきの形状変化、入れ歯自体の変形、口腔周囲筋の運動などが関与し、入れ歯が外れてしまいます。

外食中に入れ歯の隙間に食べかすがつまる

外食中に入れ歯と歯ぐきの隙間に食べかすが挟まると、歯ぐきの痛みにつながります。入れ歯の構造上歯ぐきと入れ歯の間に食べ物がつまることは避けられませんが、入れ歯と歯ぐきの適合が悪い場合に食べかすが挟まりやすくなります。

外食・外出先で入れ歯を洗いにくい

外出先では専用の入れ歯洗浄剤や洗浄容器が使えず、洗浄が不十分になりがちです。人前で入れ歯を外すことははばかられることもあり、外食後・外出先では入れ歯を洗いにくいと感じる人は多いのではないでしょうか。

入れ歯で会話・食事がしにくい

入れ歯が合っていないと発音が不明瞭になったり、食べ物をうまく噛めずに飲み込みにくくなることがあります。そのような状況では、特に人前での不安が増すため、余計に喋りずらくなることも少なくありません。

入れ歯という治療法は、どうしても自分の歯より大きく、かむ力が劣ってしまいます。天然歯と比べて会話・食事がしにくいと感じるリスクはあるでしょう。

入れ歯を紛失・破損した

入れ歯を紛失・破損したというトラブルは旅行先でも起こります。旅行中はいつもの環境と違うため、誤って入れ歯を紛失したり、破損したりしてしまうことがあります。

外食・旅行先での入れ歯トラブル対処法

外食や旅行先では、入れ歯の脱落や破損、口内炎や歯ぐきの痛みなど、思わぬトラブルが起こることがあります。予備の入れ歯や安定剤を携行すれば、急な不具合にも落ち着いて対応可能です。痛みが出た場合は入れ歯を外して歯ぐきを休ませ、清潔を保つことが大切です。また、人前で自信を持って食事を楽しむには、よくかめて外れにくい入れ歯と慣れるための練習が欠かせません。

予備の入れ歯や入れ歯安定剤を持ち歩く

外出先で予備の入れ歯や入れ歯安定剤を持っていると、万が一の脱落や破損時でも迅速に対応でき、食事や会話の不安を軽減できます。

特に入れ歯を旅行先で紛失した場合は大変です。入れ歯はすぐには作製できず、早くても数か月の治療期間が必要となります。事前に予備の入れ歯があれば、入れ歯の紛失時にも安心ですので、予備の入れ歯を作製しておくことをおすすめします。

歯ぐきに痛みが出たときはどうする?

外食や長時間装着で口内炎や歯ぐきの痛みが出たら、まずは入れ歯を外して歯ぐき休ませ、口腔内を清潔に保ちます。部分入れ歯を使用している場合は、残存している天然歯をしっかりとブラッシングしましょう。総入れ歯の場合でも、スポンジブラシで歯ぐきを優しくこすり、必要に応じて洗口液を使用しましょう。

症状が続く場合は歯科診療を受けて入れ歯の調整や治療を検討してください。

人前での食事に自信を持つための工夫

人前で安心して食事するためには、よくかめて外れにくい入れ歯が必要です。今までの入れ歯ではうまく食事ができない場合には、入れ歯を専門とする歯医者で入れ歯を作製してみてもよいでしょう。

どんなに素晴らしい入れ歯でも、最初からは上手に使えません。新しく作製した入れ歯には慣れる期間が必要です。入れ歯の調整を歯医者で受けながら、少しずついろいろな食品を食べるようにしていきます。

入れ歯で外食を楽しむためのポイント

外食を楽しむためには、入れ歯ならではの注意点と工夫が欠かせません。

餅やキャラメル、パンなど粘着質な食品は付着や脱落の原因になるため、小さく切るなどの対策が有効です。食材は左右の奥歯で均等に噛み、前歯でかみ切る際は入れ歯が外れにくい位置を意識しましょう。

新しい入れ歯は柔らかい食材から慣らし、必要に応じて食事中は外す選択も可能です。場合によってはインプラントなど他の治療法も検討できます。

外食では粘着質な食べ物に注意

餅やキャラメル、パンなどの粘着質な食べ物は義歯に付着して脱落を招くため、外食時は控えるか小さく切って食べる工夫をしましょう。パンのように、かみ砕いているうちに粘り気が生じてくる食品にも注意が必要です。

着色が付きやすい食品を知る

コーヒーや紅茶、ワインなどの色が濃い飲み物は着色が付きやすいことで知られています。薄い着色のうちは簡単に落ちても、次第に落ちにくくなっていきます。

入れ歯に付いた黒ずみには次亜塩素酸系の入れ歯洗浄剤が有効な場合が多いです。入れ歯の黒ずみ対策は下記の記事をご覧ください。

食事を入れ歯でかみやすくするコツ

食事中は口に入れる前に食材を小さく切り、左右の奥歯でバランスよく噛むことを意識すると入れ歯での咀嚼が楽になります。特に前歯で食べ物をかみ切る動作は、入れ歯が比較的苦手とする動きですので、注意が必要です。

外食で前歯を使って食べ物をかみ切るときの勘所

前歯で食べ物をかみ切る際は、コツが必要です。特に総入れ歯では、下の前歯に突き上げられると入れ歯が外れやすくなってしまいます。

食事をかみ切る位置を工夫し、できる限り上の入れ歯に対して、下方向からの力がかからないようにコントロールしましょう。

新しい入れ歯は慣れるまでトレーニングする

新調した入れ歯は数週間で口腔内に馴染むため、発音練習や柔らかい食材から徐々に慣らすトレーニングが必要です。

新しい入れ歯ができたら、すぐにかめると思っている患者さんもいますが、そのようなことはありません。特に大きな入れ歯を初めて使用する際には違和感が強くなります。

食事の時だけ入れ歯を外すのも選択肢の一つ

食事中に入れ歯を外すことを選ぶ場合は、食べやすさと審美性を考慮して行います。奥歯の小さな入れ歯であれば、患者さんによっては入れ歯を外したほうが食べやすいかたもいらっしゃいます。

歯を失った部分を長時間放置することにはリスクもありますので、かみにくい旨を歯医者に相談し、入れ歯の機能性を向上させていきましょう。

インプラントなどの入れ歯以外の治療法を検討する

入れ歯に不安がある場合、インプラントやブリッジなどの治療法に変更することも選択肢となります。インプラントやブリッジは入れ歯と異なり取り外し式ではありませんので、安定性や咀嚼力を高め、外食時のストレスを減らす有効なです。

外出先・外食後の入れ歯手入れ方法

外出先や外食後の入れ歯ケアは、快適な食事と口腔内の健康維持に欠かせません。旅行や外食の目的に応じて必要なケア用品を準備し、食後は流水や入れ歯ブラシで食べかすを除去します。マウスウォッシュやうがいも補助的に活用し、外す際は専用ケースで衛生的に保管します。手入れ不足は口臭や炎症の原因となり、入れ歯の寿命を縮める恐れがあるため、周囲への配慮を忘れず適切なケアを行いましょう。

外出前に準備しておくべき入れ歯ケア用品

外出といっても、近所で食事を食べるだけなのか、海外旅行に行くのかで、準備するものが大きく異なります。近所でご飯を食べるだけであれば、特に入れ歯ケア用品を携行する必要はないでしょう。

海外旅行となると話は変わります。旅行前には入れ歯ケース、入れ歯用ブラシ、、専用の洗浄剤などを準備します。旅行に持参すべき入れ歯用品は、下記の記事でまとめています。

食後に行うべき入れ歯の簡易的な清掃方法

外食後は入れ歯を外し、流水で大きな食べかすを洗い流します。念入りなケアが可能であれば、入れ歯用歯ブラシと入れ歯洗浄剤を使用したケアを行うと理想的です。

十分なケアをするタイミングがない場合には、うがいするだけでもお口と入れ歯のケアには有用です。できる限り早く口腔内細菌の栄養になる食べかすなどを洗い流しましょう。

外出先でのケアが不足している場合は、帰宅後に義歯用洗浄剤でしっかりと洗浄し、入れ歯を清潔に保ちます。

マウスウォッシュやうがいの活用法

マウスウォッシュやうがいは口腔内の細菌数を減らし、食後の不快感を軽減するのに役立ちます。ただし入れ歯自体の汚れ除去には限界があるため、入れ歯を外した上で洗浄できるとよいでしょう。

外出先での入れ歯保管ケースの使い方

外出先で入れ歯を一時的に外す場合は、専用ケース入れて保管します。特に小さい入れ歯では、ケース内に保管しなかったことによって紛失してしまう場合もあるので注意が必要です。

外食後に手入れを怠った場合のリスク

外食後に限らず、入れ歯の手入れを怠ると、口臭の発生や歯ぐきの炎症、残存する天然歯のむし歯・歯周病リスクが高まり、結果として入れ歯の寿命すらも縮めてしまうことがあります。

定期的な洗浄と歯科診療によるチェックで長持ちさせることが重要です。

外食後に入れ歯・お口をケアするときのマナー

外食先での入れ歯ケアは周囲に配慮しつつ、使用後の衛生面にも気を配ることがマナーです。

日本ではトイレでの口腔ケアは比較的受け入れられていますが、海外では文化的な理由から人前で口腔ケアを行いにくいことが多いです。海外ではうがい程度にとどめることが無難かもしれません

海外では客室などのプライベートな空間でしっかりとした入れ歯ケアを行うとよいでしょう。

入れ歯の正しい日常ケアと長持ちさせる方法

毎日の入れ歯ケアは、口腔内の健康と入れ歯の寿命を守るために欠かせません。毎食後は流水で食べかすを落とし入れ歯ブラシで優しく洗浄し、就寝前には洗浄剤でつけ置きします。

入れ歯用歯ブラシは細部まで汚れを落とせる形状で、効率的かつ効果的に入れ歯の汚れを落とせます。入れ歯のお手入れ時には熱湯や研磨剤入り歯磨き粉の使用は避けましょう。

さらに、定期的な歯科での調整・点検により痛みや脱落を防ぎ、快適な入れ歯生活を長く続けられます。

毎食後の洗浄と就寝前の手入れ

毎食後は流水で食べかすを落とし、入れ歯ブラシで優しく洗浄、就寝前には専用洗浄剤に浸け置きして細菌や汚れを除去すると口腔内の健康が保たれます。

入れ歯の理想的な洗浄方法については下記の記事をご覧ください。

入れ歯洗浄剤の正しい使い方と頻度

入れ歯洗浄剤は製品の指示にしたがい、毎日使用します。

一般的には就寝中に入れ歯をつけ置きすることが多いと思いますが、5分程度で除菌・洗浄ができる製品が多いので、日中にも積極的に使用しましょう。

入れ歯は天然歯と異なり、外して洗浄することが可能です。入れ歯のメリットを生かすために、入れ歯洗浄剤による清掃は怠らないようにしましょう。

入れ歯洗浄剤や入れ歯用歯磨き粉の選び方が気になる方は下記の記事が参考になります。

入れ歯用歯ブラシと普通の歯ブラシの違い

入れ歯用歯ブラシは、入れ歯を効率的かつ効果的に洗浄するために設計されたブラシです。普通の歯ブラシでは届きにくい入れ歯の細かな部分の汚れを落としやすく作られています。

普通の歯ブラシより大型で、持ち手も太いため力も入れやすく、簡単に入れ歯の清掃が行えます。入れ歯用歯ブラシの選び方は下記の記事でまとめています。

熱湯や歯磨き粉の使用を避ける理由

熱湯は入れ歯を変形させてしまいます。入れ歯のピンク部分(義歯床:ぎししょう)は比較的やわらかいプラスチックでできています。熱湯によって容易に変形し、元の形には戻らないので気をつけましょう。お湯を使用する場合は熱くない程度のぬるま湯で洗います。ぬるま湯のほうが冷水よりも汚れが落ちやすいです。

研磨剤が配合さた歯磨き粉は、入れ歯の表面を傷つけて汚れが付きやすくなるため使用を避けるべきです。専用の入れ歯用歯磨き粉や入れ歯用洗浄剤を使用しましょう。

The effect of cleaning substances on the surface of denture base material

定期的に歯医者で入れ歯を調整・点検することの重要性

定期的な歯科検診で入れ歯の適合や咬合のチェック、部分的な修理や調整を受けることで痛みや脱落を未然に防げます。診療を受けることで口腔内の変化や義歯の摩耗を早期に発見でき、長期的な入れ歯の安定につながります。

外食時に役立つ入れ歯安定法

外食を快適に楽しむためには、入れ歯を安定させる工夫が欠かせません。安定剤にはクリーム・テープ・粉末タイプがあり、装着前に入れ歯を清潔にしてから適量を塗布します。

長時間安定するクリームタイプや、頻繁に洗浄する人向けの粉末タイプなど、用途に合わせて選びましょう。過度な使用は避け、毎回しっかり洗浄することが大切です。安定しない場合は自己判断せず、歯科での調整や診断を受けることが安心につながります。。

入れ歯安定剤の種類と使い方

入れ歯安定剤にはクリームタイプ、テープタイプ、粉末タイプなどがあり、使用前に入れ歯を清潔にしてから適量を義歯の裏側に塗布して装着します。

一般的にはクリームタイプの入れ歯洗浄剤が用いられることが多いです。クリームタイプは長時間効果が持続する一方で、入れ歯洗浄時には取りにくいというデメリットがあります。

毎食後など、頻繁に入れ歯を洗浄したい人には粉末タイプの入れ歯洗浄剤がおすすめです。

入れ歯安定剤を使用する際の注意点

製品ごとの指示を守り、入れ歯安定剤の過度の使用は避けましょう。少量を薄く塗り広げるイメージで使用します。入れ歯を洗浄する際には、毎回しっかりと取り切りましょう。

入れ歯安定剤を使用する前には、入れ歯をしっかりと清掃します。入れ歯と口腔内が不潔になるだけでなく、入れ歯安定剤の効果を損なう可能性があります。

入れ歯安定剤は応急的な使用や歯医者からの指示がある場合に限り使用するのが理想的です。入れ歯が安定しない際には自己判断で入れ歯安定剤を使用するのではなく、まずは歯医者を受診するようにしましょう。

まとめ│入れ歯で外食するときの注意点と食後のお手入れ

外食・外出ならではの問題点と注意点を解説させていただきました。

トラブルが起こってからでは遅いこともあるため、日頃から正しい口腔ケア・入れ歯ケアを実践し、定期的に歯医者で検診を受けましょう。

入れ歯の使用有無にかかわらず、食後には何らかの口腔ケアをしてあげましょう。丁寧なケアができる環境であれば、入れ歯を外して入れ歯と天然歯を磨きます。簡易的なケアしかできない環境では、うがいをしてお口のなかの糖や食べかすなどを洗い流しましょう。

Q&A

「入れ歯の外食時のお手入れ」 に関連する質問を集めました。

入れ歯は食事のたびに洗うべきですか?

入れ歯は毎食後洗浄するのが理想的です。外食・外出などで洗浄が難しい場合には、うがいをすることも効果的です。食後に歯磨きや入れ歯洗浄ができなかった場合には、できる限り早いタイミングで丁寧なケアを行ってあげましょう。

入れ歯を外して食事はできますか?

失った歯の本数が少ない場合は、入れ歯を外して食事をすることは可能です。お口に合わない入れ歯を付けているより、入れ歯を外していたほうが食べやすいという方もいらっしゃいます。しかし入れ歯を装着しないことによるリスクもありますので、自己判断には注意が必要です。

入れ歯で食べてはいけないものは?入れ歯で食べにくいものは?

入れ歯で食べてはいけないものはありません。しかし、極端に硬いものや、前歯でかみ切らなければいけないものなどは入れ歯が苦手としています。調理などによって食品の硬さや形態をコントロールしましょう。

目次