入れ歯の入れ方・外し方│総入れ歯と部分入れ歯の着脱順番

入れ歯ナビ:入れ歯の入れ方・外し方
遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の歯医者「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

入れ歯を快適に使用するためには、入れ歯の正しい入れ方と外し方を覚えることが重要です。

ここでは、入れ歯装着の前準備から装着手順、そして気になる介護・看護現場でのポイントを詳しく解説します。

目次

1分でわかる!総入れ歯と部分入れ歯の入れ方・外し方

① 口と入れ歯を清潔に
歯がある場合には歯磨き、歯がない場合にはスポンジブラシで歯ぐきを清掃する。入れ歯も入れ歯用歯ブラシと入れ歯洗浄剤でしっかりと清掃してから入れ歯装着します。

入れる前に上下や前後をチェック

  • 上下どちらの入れ歯か
  • 裏表
  • 前後

指でゆっくり入れる
かんで入れず、指で静かに装着します。

入れ歯の種類押さえる場所
総入れ歯臼歯部の人工歯の上から垂直に押す
部分入れ歯レストを上から押さえてフィットさせる

④ 入れ歯の種類に合わせた外し方

総入れ歯では、入れ歯と歯ぐきの間に空気を入れるように外します。入れ歯の前歯部分を持ち、入れ歯の後方を持ち上げるように外すと簡単です。

部分入れ歯ではクラスプに指を引っかけて持ち上げます。

⑤ 使用後もきちんと清掃

自分の歯と一緒で、食後は必ず清掃しましょう。

着脱前に知っておきたい!総入れ歯と部分入れ歯の違いと構造

そもそも入れ歯とは?

入れ歯とは、失った歯や歯ぐきを回復させるための治療法で、専門用語では「義歯(ぎし)」と呼ばれます。失った歯を補う治療の中でも、患者さん自身で取り外しができことがポイントです。入れ歯はかむ機能だけでなく、発音や見た目にも影響する治療です。

高齢者だけの治療法と思われるかもしれませんが、日本では30代後半から使用され始めます。40代の部分入れ歯装着割合は0.4%、総入れ歯の装着割合は0.8%となっています。80代以上では、部分入れ歯の装着割合が 46.3%、総入れ歯の装着割合は32.4%となり、入れ歯が一般的な治療法といえるでしょう。

総入れ歯と部分入れ歯の違い

総入れ歯と部分入れ歯の違いは、「歯を何本失っているか」と「どこで支えるか」に集約されます。

総入れ歯は、上下どちらかの歯がすべて失われた場合に使う入れ歯で、歯ぐきによって支えられます。

部分入れ歯は、一部の歯が残っている人に用いるもので、残った歯にバネ(クラスプ)をかけ、歯と歯ぐきの両方で入れ歯を支える構造です。

総入れ歯は粘膜に強い負担がかかりやすく、部分入れ歯では残っている歯に負担がかかりやすいのが特徴です。

入れ歯の基本的な構造

総入れ歯の基本構造は、歯ぐきに触れる「床(しょう)」と、その上に並ぶ「人工歯(じんこうし)」でできています。

床はレジンや金属でできた土台部分で、歯ぐきを広く覆うことで入れ歯を安定させます。床の上には人工歯が並び、かむ機能と見た目を回復します。総入れ歯にはクラスプはなく、床と歯ぐきが吸着することで外れにくくなる構造です。イメージとしては、ガラスにくっつく吸盤のような状態です。

部分入れ歯も、基本は「床」と「人工歯」で構成されますが、ここに残っている歯に引っかける「クラスプ」が加わります。床の上に人工歯が並び、失われた部分を補いながら、クラスプが残存歯をつかむことで入れ歯を固定します。つまり、部分入れ歯は「床と人工歯で欠損部を補い、クラスプで歯に固定する」構造になっている点が、総入れ歯との大きな違いです。

総入れ歯が外れない仕組み

総入れ歯が外れないのは、「床と歯ぐきが唾液を介して吸着し、その空間に陰圧が生じる」ためです。

床と粘膜がぴったり適合し、床辺縁が頬や唇・舌側でしっかり封鎖されると、その間には薄い唾液の膜だけが満たされた“密閉された空間”ができます。ここで義歯を引きはがそうとすると、床と粘膜の間の容積だけが先に広がろうとし、外の空気がすぐには入り込めないため、一時的に「中の圧が外気より低い(陰圧)」状態になります。この陰圧と唾液膜の付着力が合わさることで、吸盤のように総入れ歯が歯ぐきに押しつけられ、外れにくくなります。

逆に、適合不良や辺縁封鎖の不十分、唾液量の低下があると空気が入りやすくなり、陰圧が保てず外れやすい総入れ歯になります。

部分入れ歯が外れない仕組み

部分入れ歯が外れない一番の理由は、「歯にかかるクラスプ(バネ)による機械的な維持力」です。クラスプの先端は、支えとなる歯の“くびれ”(アンダーカット)部分をそっと抱え込むように設計されており、入れるときにはわずかにしなって乗り越え、正しい位置に収まると元の形に戻って歯をつかみます。この「しなり」と「元に戻ろうとする力」が、外れにくさの大本です。

さらに、レスト(小さな出っ張り)がかむ面に乗ることで沈み込みを防ぎ、金属フレームや床が歯ぐきに広く接して力を分散します。ガイドプレーンと呼ばれる歯の側面と義歯の接触面が“レール”の役割を果たし、決められた方向以外には外れにくくなる点も重要です。唾液によるわずかな付着力も加わりますが、部分入れ歯ではあくまでクラスプとレストを中心とした「歯と義歯の精密な機械的構造」が、外れない仕組みの核心だと考えてください。

総入れ歯の入れ方・外し方

総入れ歯を入れる前の準備と口腔ケアの基本

総入れ歯の入れ方・外し方を実践する前に、まず口腔内と入れ歯をきれいにすることから始めます。

歯ぐきや舌、頬の内側をスポンジブラシや舌ブラシで優しく清掃します。歯がないからといって、口腔内の清掃をしなくてもよい訳ではありません。特に舌は、カビの一種であるカンジダ菌をはじめとする、微生物の温床となるため、入念な清掃が必要です。

入れ歯本体は入れ歯用歯ブラシと入れ歯洗浄剤でよく洗い、十分にすすぎます。入れ歯に付着するぬめり汚れを「デンチャープラーク」と言いますが、これは細菌の塊です。歯ぐきの痛みや誤嚥性肺炎の原因となることもありますので、毎日の徹底した義歯洗浄が必須です。

入れ歯を装着する前に、以下の3点を確認しましょう。

  • 上下のどちらに装着するか
  • 入れ歯の裏表
  • 入れ歯の前後

上下の総入れ歯では形が大きく異なるためわかりやすいです。上の総入れ歯と違い、下の総入れ歯では舌が入るスペースが開いているのが特徴です。

総入れ歯の正しい入れ方と入れる順番

総入れ歯を入れる際は、前述したように口腔内と入れ歯をしっかりと清掃します。入れ歯は乾かさずに、ぬれた状態で口腔内に挿入します。唾液が少なく、口腔内が乾いている場合には、お水などでお口をゆすいでから入れ歯を入れた方が安定しやすいです。

上の総入れ歯は、後方の位置を大体合わせてから、前歯部分を合わせます。前歯部分を入れる際には、唇が邪魔をしますので、上唇を指などで避けながら入れます。入れ歯全体としては前方から後方に押し込むようなイメージです。

口腔内に入れ歯が入ったら奥歯部分を軽く押すことで、空気を抜き、吸着を高めます。

総入れ歯では臼歯を、部分入れ歯ではレストを垂直に押さえます。
左:総入れ歯 右:部分入れ歯 ○の部分を指で押さえる

総入れ歯の入れる順番に決まりはありません。一般には「上顎から入れて下顎を後にする」ことが多いです。

その理由は、上下とも総入れ歯を使用している場合、上の入れ歯の方が安定しやすいことと、お口を開けたときに下顎の方が見やすいことが考えられます。

そのため、まず上の入れ歯を先にしっかり吸着させておくと、下の入れ歯を入れるときに動いて邪魔になる心配が少なくなります。逆に先に下の入れ歯を入れてしまうと、口の中が狭く見えにくくなり、上の総入れ歯の位置合わせや入れ方が難しくなります。こうした理由から、「上→下」の順番で装着する方が、視野も確保しやすく、安定した状態で安全に総入れ歯を入れやすいと考えられます。

総入れ歯正しい外し方

総入れ歯の外し方は簡単です。入れ歯の前歯部分をつまみ、入れ歯の後方が持ち上がる方向に動かし粘膜の吸着を解除します。決して真上に強く引き抜かず、頬や唇を軽く引きながら入れ歯と歯ぐきの間に空気を入れてあげると外れやすくなります。

部分入れ歯の入れ方・外し方

部分入れ歯を入れる前の準備と歯磨きの基本

部分入れ歯は残っている歯が土台になるため、入れ方・外し方の前に支えとなる歯の歯磨きがとても重要です。特にクラスプがかかる歯は、汚れが残りやすく、虫歯や歯周病となるリスクが高い部分です。ワンタフトブラシや歯間ブラシなどを併用し、丁寧に清掃しましょう

入れ歯の清掃を怠ってしまうと、口腔内でも細菌や真菌が繁殖しやすく、義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)などを引き起こすことがわかっています。

部分入れ歯本体は、金属部分も含め専用ブラシでこすり洗いします。特にクラスプ周囲の汚れを取り残しやすいので注意深く磨きましょう。入れ歯洗浄剤は「部分入れ歯用」のものを使用します。

総入れ歯を装着する前と同様に、以下の3点を確認します。

  • 上下のどちらに装着するか
  • 入れ歯の裏表
  • 入れ歯の前後

総入れ歯とは異なり、部分入れ歯は形態が多様なので、わかりにくいです。歯医者で実際に着脱の練習をすることが大切です。介護・看護の現場では、写真を撮影し、上下や前後をメモして共有するとわかりやすいでしょう。

デンチャー プラークのカンジダに関する研究 (第1報) デンチャープラークのカンジダ叢と義歯性口内炎との関係

部分入れ歯の正しい入れ方と順番

部分入れ歯の入れ方は、「まず位置合わせ、次にクラスプをそっとかける」という順番を守ることが大切です。義歯を持ったら、まず人工歯の位置を歯が失われた部分に合わせます。クラスプをクラスプがかかる歯に合わせ、上から入れ歯をそっと押し込んでいきます。

入れ歯が正しい位置に納まったら、レスト部分を真下に押し込み、入れ歯をしっかりとフィットさせます。部分入れ歯では、垂直に入れ歯を入れる設計になっていることが多いです。

部分入れ歯正しい外し方

部分入れ歯の正しい外し方は、まずクラスプに指先を引っかけて、そっと持ち上げることが基本です。人工歯や床の部分を無理に引っ張るのではなく、クラスプがかかっている歯の近くを親指と人差し指でつまみ、左右同時に少しずつ持ち上げるように外します。

このとき、ねじる・こじる動きはクラスプの変形や支えの歯の負担になるため禁物です。外す方向は、入れるときの“逆方向”(装着方向と同じ線上)を意識し、まっすぐ浮かせてから静かに口の外に出すようにすると、安全かつ壊れにくく外せます。

入れ歯を外した後のケアと保管方法

入れ歯を外した後のお手入れ方法

入れ歯のお手入れは、毎日「機械的清掃」と「化学的清掃」を組み合わせて行うことが基本です。

まず流水で食べかすを流し、入れ歯用ブラシで床の裏側や人工歯、クラスプのまわりを丁寧に磨きます。その後、入れ歯洗浄剤に決められた時間だけ浸け置きし、目に見えない細菌や着色汚れも除去します。

研磨剤入り歯磨き粉や熱湯、塩素系漂白剤などは変色や変形の原因になるため避けましょう。

入れ歯を外した後の保管方法

入れ歯は水中保管が一般的ですが、乾燥保管でも問題ないとするデータも存在します。筆者は管理や清潔さの観点から入れ歯は空気中に保管することを推奨しています。

就寝中などの入れ歯を洗浄している間は、専用の入れ歯ケースにぬるま湯と入れ歯洗浄剤を入れて浸しておきます。使用後のケースも毎日洗ってよく乾かすと、カビや細菌の増殖予防に役立ちます。

ティッシュに包んで置くと誤捨てや紛失が起こりやすいので、必ずケース内で入れ歯を管理する習慣をつけることが大切です。

特に認知症が進行した場合、入れ歯をどこに置いたかわからなくなることもあります。日頃から入れ歯は入れ歯ケース内で保管することと、入れ歯ケースの定位置を決めておきましょう。

歯科医院におけるメインテナンス

入れ歯は作ったら終わりではなく、調整が必要です。顎の骨や歯ぐきの状態は日々変化しています。合わなくなった入れ歯をそのまま使用すると、痛み・傷・外れやすい・かみにくいなどのトラブルを招きやすくなります。

3か月〜1年に一度を目安に歯科医院でチェックを受け、歯ぐきとの適合状態の調整や、かみ合わせの確認、クラスプの締め直しなどのメンテナンスを行いましょう。

自己判断で入れ歯を削ったり曲げたりすると、修復困難な破損につながるため避けましょう。

介護・看護現場での入れ歯の入れ方・外し方

介護・看護で入れ歯を着脱するときの準備

介護・看護で入れ歯の着脱を行う前には、まず介助者の手洗いと手袋の着用を済ませます。爪が長い場合には、口腔粘膜を傷つけてしまうことがありますので、短くカットすることが推奨されます。

入れ歯の着脱時には本人には必ず声かけを行い、これから何をするのか、痛みがあればすぐ伝えてもらうことを確認します。姿勢は、座位でも仰臥位でもかまいませんが、小さな部分入れ歯の場合は誤飲の可能性に注意してください。仰臥位の方が口腔内は見やすいですが、座位の方が安全です。

介護・看護現場における入れ歯の入れ方・外し方のコツ

自分で着脱する場合も、介護者などが着脱する場合も原則は変わりません。

総入れ歯では入れ歯と歯ぐきの間に空気を入れるように外し、部分入れ歯ではクラスプに指をかけて外します。

総入れ歯は比較的外しやすいですが、部分入れ歯はなかなか外せないこともあるかもしれません。ヘッドライトなどを使用し、クラスプがしっかり見える状態で外すと外しやすいです。

前もって入れ歯の写真を撮影しておき、どこにクラスプがあるのか共有しておくのも良いでしょう。

口腔ケアと入れ歯の着脱を同時に行うときの注意点

口腔ケアと入れ歯の入れ方・外し方を同時に行う場合は、まず入れ歯を外し、入れ歯の清掃を行います。入れ歯洗浄剤を使用する場合は、入れ歯洗浄剤に浸漬しておきます。その後、口腔ケアを行うことで、浸漬時間を有効活用することができます。

口腔ケアと入れ歯の着脱を同時に行うときは、まずケア前に口腔内と入れ歯に傷・発赤・ひび割れなどの異常がないか確認し、ケア後にも同様にチェックすることが大切です。

歯がないからといって口腔ケアを省いてしまうと、粘膜炎症や誤嚥性肺炎のリスクが高まりますので、歯ぐき・舌・頬の内側もしっかり清掃します。

また、外した入れ歯はティッシュに包んで置かず、必ず入れ歯ケースに入れ、名前をわかるようにして紛失や取り違えを防ぐことが重要です。

在宅介護・訪問看護でのポイント

在宅介護・訪問診療では、まず義歯ブラシ・洗浄剤・入れ歯ケースなど入れ歯ケア用品をひとまとめにしておき、誰が見ても分かる場所に保管します。

入れ歯の入れ方・外し方は、歯科で教わった手順をノートや張り紙に図付きでまとめ、家族やヘルパー間で共有するとケアの質が安定します。

また、家族がどこまで口腔ケアに介入できるか事前に確認し、できる範囲と歯科・訪問衛生士に任せる範囲を整理しておくことも重要です。

ケア時は口の中が見やすい姿勢(ベッドの角度・頭の位置)をあらかじめ決め、ペンライトやヘッドライトで口腔内を明るく照らすことで、小さな傷や汚れにも気づきやすくなります。

入れ歯の入れ方・外し方に関するトラブル

部分入れ歯が外れない

部分入れ歯が外れないときは、クラスプが強く食い込んでいることが考えられます。無理に強く引き抜くと、クラスプの変形や支えの歯の破折につながるため避けましょう。早めに歯科医院で診てもらった方が安全です。

入れ歯を入れると痛い

入れ歯を入れると痛い場合、床の一部が粘膜を強く押している、不適切なかみ合わせで特定の部位に力が集中している、クラスプが歯ぐきに当たっている、といった問題が疑われます。

新しい入れ歯では、慣れる過程で軽い違和感を感じることもありますが、「ピンポイントの鋭い痛み」や「赤くただれている部位」があれば調整が必要です。

痛い側で無理に噛み続けると、傷や潰瘍が悪化し、食事や会話がさらに困難になります。自分で削ったり曲げたりはせず、痛む場所を覚えておいて歯科で伝えると、的確な調整が受けやすくなります。

誤飲・誤嚥が疑われるときの観察ポイントと緊急時の対応

入れ歯の誤飲・誤嚥が疑われるのは、着脱中や食事中に突然むせ込み、咳き込み、声がかすれる、呼吸が苦しそうになる、といったサインが出たときです。誤嚥した場合には呼吸困難となりますので、救急車を呼びましょう。

誤飲した場合も医療機関の受診が必要です。入れ歯は大きいため、自然に排泄されにくいです。一般的には内視鏡での摘出が必要になります。誤嚥とは異なり緊急性はありませんが、できる限り早く病院を受診しましょう。

誤った入れ方・外し方で入れ歯が壊れた

誤った入れ方・外し方を続けると、床にひびが入る、人工歯が外れる、クラスプが開いてしまう、といった破損が起こりやすくなります。壊れた入れ歯を瞬間接着剤などで自己修理すると、適合がさらに悪くなるだけでなく、接着剤の成分が粘膜を刺激するおそれもあり危険です。

破損に気づいたら使用を中止し、できるだけ元の状態を保ったまま歯科医院に持参して修理や再製作の相談をしましょう。同時に、壊れた原因となった入れ方・外し方の癖を振り返り、再度正しい手技を指導してもらうことが再発防止につながります。

入れ歯安定剤が取れない

入れ歯安定剤がなかなか取れないときは、いきなり強くこするのではなく、ぬるま湯に浸して入れ歯安定剤をふやかすことがポイントです。そのうえで入れ歯用歯ブラシと専用の入れ歯洗浄剤を使い、丁寧にこすり洗いします。

口の中に残った安定剤は、ガーゼやスポンジブラシを使ってぬるま拭い取り、粘膜を傷つけないようにします。毎回安定剤が厚く残る場合は、量が多すぎる、塗る範囲が広すぎるなどの可能性があるため、使用方法を見直し、歯科医師に相談するとよいでしょう。

「総入れ歯と部分入れ歯の入れ方・外し方」のまとめ

総入れ歯と部分入れ歯を快適に使うには、「正しい入れ方・外し方」と「順番」が重要です。総入れ歯は、清掃後に上顎から入れてしっかり吸着させ、その後に下顎を装着するのが一般的です。外すときは前歯部をつまみ、入れ歯と歯ぐきの間に空気を入れるようにして外します。部分入れ歯は、まず人工歯の位置を合わせ、クラスプをそっと支え歯にかける順番で入れ、外すときはクラスプに指先を引っかけて左右同時に持ち上げます。介護・看護の現場では、入れ歯ケア用品の準備、口の中が見やすい姿勢づくり、紛失・誤飲に注意しつつ、家族やスタッフ間で入れ方・外し方を共有しておくことが大切です。

Q&A

「総入れ歯と部分入れ歯の入れ方・外し方」に関する質問を集めました。

入れ歯は上から入れる?

総入れ歯の場合、一般的には「上の入れ歯から入れて、次に下の入れ歯を入れる」順番が推奨されます。上顎の総入れ歯の方が吸着によって安定しやすく、先にしっかり固定しておくことで、下の入れ歯を入れる際に動いて邪魔になりにくくなるからです。また、先に下の入れ歯を入れると、口の中が狭く見えにくくなり、上の入れ歯の位置合わせが難しくなります。部分入れ歯では設計によって最適な順番が変わるため、基本的には担当歯科医師から説明された「その入れ歯専用の入れ方」を優先することが大切です。

入れ歯を外さずに寝てもよいのか?

原則として、入れ歯は寝る前に外してから就寝することが勧められています。外さずに長時間装着し続けると、歯ぐきが休めず血流が悪くなり、義歯性口内炎や傷の原因になります。また、入れ歯と粘膜の間に汚れや細菌が溜まりやすく、誤嚥性肺炎のリスクを高める可能性があると指摘されています。特別な医療上の理由で夜間も装着が必要な場合を除き、夜は外して清掃し、水に浸して保管するのが基本です。介護の現場では、「夜は外す」のか「医師の指示で装着継続なのか」を家族・歯科医と共有しておくことが重要です。

入れ歯が外れやすくなる原因は?

入れ歯が外れやすくなる主な原因は、顎の骨や歯ぐきが痩せて形が変わり、床との適合が悪くなることです。総入れ歯では吸着が弱まり、部分入れ歯ではクラスプのゆるみや支えの歯の揺れが重なると、ちょっとした力で浮き上がりやすくなります。熱湯や乾燥による変形、咬み合わせの変化、唾液量の低下も外れやすさを助長します。安定剤で一時的にごまかすことはできますが、根本的な解決には調整や裏装、場合によっては作り直しが必要です。「最近よく外れる」「食事中に浮いてくる」と感じたら、早めに歯科医院で状態を確認してもらいましょう。

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