入れ歯の上下の見分け方で、まず覚えておきたい結論はシンプルです。真ん中を大きく横切るようなパーツがあれば上の入れ歯、舌の動くスペースを空けるように中央が開いていれば下の入れ歯と考えると、かなり見分けやすくなります。総入れ歯でも部分入れ歯でも、この基本は共通です。
一方で、入れ歯には総入れ歯・部分入れ歯・金属床・ノンクラスプデンチャーなどの違いがあり、見た目はまったく同じではありません。上下や前後が分からないまま無理にはめると、痛みや違和感の原因になります。この記事では、入れ歯の上下と前後の見分け方を、歯科医師の視点でやさしく整理します。
- 入れ歯の上下の見分け方の基本
- 総入れ歯と部分入れ歯の違い
- 上の入れ歯と下の入れ歯の特徴
- 入れ歯の前後の見分け方
1分で分かる!入れ歯の上下の見分け方

入れ歯の上下の見分け方で最も分かりやすいのは、真ん中の形を見ることです。上の入れ歯は、総入れ歯なら口蓋を広く覆い、部分入れ歯でも口蓋側に金属のパーツが配置されることがあります。反対に、下の入れ歯は舌のスペースが必要なため、入れ歯中央に空間がある形が基本です。
前歯を含む部分入れ歯では、上下の前歯の大きさの違いから上下を見分けることも可能です。上の前歯より、下の前歯は小さいので、小さい人工歯が使われていれば、下の入れ歯です。

前後の見分け方では、奥歯の人工歯の大きさをよく確認しましょう。大きな人工歯は大臼歯なので、基本的に後ろ側です。
入れ歯とは?
入れ歯は、失った歯を補うための取り外し式の装置です。
入れ歯には、失った歯の本数により総入れ歯と部分入れ歯に分けられます。使用する材料によっても入れ歯の名称は変わり、レジン床義歯や金属床義歯などが存在します。
部分入れ歯と総入れ歯
歯が1本でも残っていれば部分入れ歯、すべての歯を失っていれば総入れ歯を使用します。

入れ歯の基本的な構造は、歯ぐき部分の床(しょう)と、歯の部分の人工歯(じんこうし)です。
総入れ歯は床と人工歯のみでできていますが、部分入れ歯は床と人工歯に加え、クラスプなどのパーツがつきます。
クラスプをはじめとする部分入れ歯の構造を知りたい方は下記の記事をご覧下さい。

入れ歯の種類
入れ歯の種類にはいくつか考え方があります。
まずは前述したように、失った歯の本数による分類です。全ての歯を失った場合は総入れ歯、それ以外の場合は部分入れ歯です。
次に、使用する材料による分類です。主にプラスチックでできた入れ歯は、レジン床義歯と呼ばれます。保険治療で作られる入れ歯の大部分はレジン床義歯です。
レジン床義歯よりも金属をたくさん使用したものは、金属床義歯と呼ばれます。自費治療で作られる入れ歯は金属床義歯が多いです。
金属床義歯については下記の記事で詳しく紹介しています。

入れ歯の上下の見分け方
入れ歯の上下の見分け方は、上は口蓋をまたぐ、下は舌のスペースを空けると覚えるのが一番実用的です。特に総入れ歯ではこの差がはっきりしており、部分入れ歯でも大連結子の位置を見ると判断しやすくなります。
それでも迷ったときは、入れ歯を持参して歯医者に確認してもらいましょう。
上の入れ歯の特徴
上の入れ歯の特徴は、口蓋部にプラスチックや金属のパーツがあることが多い点です。真ん中を横切るようにパーツが配置されていれば上の入れ歯と考えてよいことが多いです。
上顎と下顎の大きな違いとして、舌の有無があります。下顎には舌があるため、真ん中を横切るようにパーツを配置すると、舌の動きを妨げてしまいます。一方で上顎には舌はありませんので、中央部にもパーツを配置することができるのです。
下の入れ歯の特徴
下の入れ歯の特徴は、舌のスペースが必要なため、真ん中に大きなパーツが配置されないことです。
ただし、下の部分入れ歯にもリンガルバーやリンガルプレートなどの連結装置はあります。つまり「何もない」のではなく、舌のスペースを確保するために、歯の内側を沿う形でパーツが配置されます。
上下の入れ歯の比較
上下の入れ歯を比べると、見分け方のポイントは舌のスペースが確保されているかどうかです。
しかし、この見分け方は左右にまたがるような、比較的大きい入れ歯でしか判断できません。例えば1本分の小さな入れ歯では、上下を見分けることは非常に難しいです。
小さい入れ歯の上下が分からなくなった場合には、無理をしてはめるのではなく、歯医者に確認してもらうほうが安心です。実際の入れ歯を見ながら、見分け方を解説してもらうことができますので、今後の判断ポイントにしてください。
上下の区別ができても、誤った方法で入れ歯の付け外しを行うと痛みが生じる場合があります。入れ歯を装着する際は、下記の記事をご一読いただき、正しい方法で着脱してください。

前歯を含む部分入れ歯では、前歯の人工歯の大きさを判断基準にすることもできます。上の前歯と下の前歯では、下の前歯のほうが小さいので、小さい前歯は下の入れ歯だということがわかります。
入れ歯の前後の見分け方
入れ歯の前後の見分け方は、人工歯とクラスプの大きさで判断します。
前歯の部分入れ歯は、前後を間違えることは少ないので、今回は奥歯の部分入れ歯の見分け方を紹介します。
部分入れ歯の前後
部分入れ歯の前後の判断で迷いやすいのは、奥歯の部分入れ歯です。
奥歯の部分入れ歯の前後の判断ポイントは、人工歯の大きさです。
奥歯には大臼歯(だいきゅうし)が左右で4本、小臼歯(しょうきゅうし)が左右で4本あります。大臼歯には第一大臼歯と第二大臼歯があり、小臼歯にも第一小臼歯と第二小臼歯があります。
大臼歯と小臼歯を比べると、その名前の通り大臼歯のほうが大きいです。大臼歯と小臼歯を含む入れ歯では、大きい人工歯がある方が、後ろ側です。
第一大臼歯と第二大臼歯を比べると、第一大臼歯のほうが大きいので、大臼歯だけの部分入れ歯では小さい人工歯の方が後ろ側です。
第一小臼歯と第二小臼歯を比べると、第一小臼歯のほうがやや大きく、大臼歯と同じ関係です。しかし大臼歯と比べると、第一小臼歯と第二小臼歯の大きさの違いは小さいことから、小臼歯だけの部分入れ歯では前後の判断は難しくなります。

小臼歯だけの部分入れ歯では、クラスプの大きさを確認しましょう。大きなクラスプは大臼歯に装着されることから、大きなクラスプがある方が後ろ側です。
「入れ歯の上下の見分け方は?」のまとめ
入れ歯の上下の見分け方は、まず「真ん中の形」を見ます。口蓋を広く覆い、中央を横切るような床や金属パーツがあれば上の入れ歯、舌のスペース確保のため中央が大きく開いていれば下の入れ歯です。
前歯を含む場合は、上の前歯のほうが大きく下は小さい点も目安になります。前後の見分け方は奥歯の人工歯の大きさがヒントで、大きい臼歯がある側が後ろになりやすいです。迷ったまま無理にはめると痛みや変形の原因になるので、歯医者で確認しましょう。
Q&A
「入れ歯の上下の見分け方は?」に関連する質問を集めました。
- 入れ歯の上下が分からないときは、最初にどこを見ればよいですか?
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まずは真ん中の形を見てください。口蓋をまたぐような大きなパーツがあれば上、中央が大きく開いていれば下の入れ歯と考えやすいです。
- 真ん中を横切るパーツがあれば、必ず上の入れ歯ですか?
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上の入れ歯を疑ってよいことが多いです。特に総入れ歯ではその傾向が強いです。ただし、下の部分入れ歯にも内側に連結装置はあるため、パーツの有無よりも、そのパーツがどこを通っているかが重要です。
- 下の入れ歯にも金属のパーツはありますか?
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あります。下顎の部分入れ歯では、リンガルバーやリンガルプレートなどが使われます。ただし、上顎のように中央を広く覆う形にはなりません。
- 入れ歯の向きが分からないまま入れても大丈夫ですか?
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よくありません。合わない向きで無理にはめると、痛みや着脱不良の原因になります。迷ったら無理矢理装着するのではなく、本記事を確認するか、歯医者を受診しましょう。
- 上下や前後が分からなくなるのを防ぐ方法はありますか?
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洗浄後に上と下を別々のケースに保管する、上は口蓋・下は舌スペースという特徴を覚える、といった方法が有効です。それでも分からなければ歯科医院で確認してください。歯医者によっては、入れ歯自体に「上」「下」などの文字を入れてくれる場合もあります。


